第2話 私と許嫁様
パタパタと玄関へと向かった恋は
目的の一歩手前で足を止め物陰に隠れて深呼吸をした。
「(…子供っぽく走ってしまいました…!落ち着いて大人っぽく……)」
と心の中で反省していると。
「お久しぶりです。圭一郎殿」
「久しいな暁都くん。」
玄関では恋よりも先に恋の叔父にあたり現皆乃川家の当主 皆乃川 圭一郎が背の高く逞しい体型をした長髪を一つに束ねた男を出迎えていた。
「(叔父様!)」
恋は思わずそのまま物陰に隠れて聞き耳を立てた
「しかし君のような若者に今回の遠出は少々痛手であったろう。」
「いいえ、爵位を持つということはそう言うことですので。ところで許嫁殿は息災だろうか?」
「恋か?それなら朝からやたらとソワソワしていたがもう支度はすんでいる頃合い…そろそろこっちに来てもいいころだな。」
2人は恋が物陰に隠れていることを知らない。
「(か、隠れていてはダメ!ちゃんと一昨日の夜から毎日"長旅ご苦労様でした伯爵様"って言うんだって決めてたから!)」
頭の整理がつかぬまま
唐突に自分の話題が出た恋はそっと物陰かや顔を出した。
顔を出したとき____空色の瞳と目が合う。
黒と茶の混じりっけのある髪に空色の透き通る瞳とそして無機質な仏頂面
2年前と変わらぬ姿と
「あ、あ……えと…」
目が合うと思わなかったことで恋は言葉に詰まる。
「…!なんだ来ていたのか」
圭一郎も暁都の視線の先を辿り恋の存在に気づいた。
「…………」
「…………」
恋と暁都の間に沈黙が流れる。
「あ、あの…」
沈黙を最初に破ったのは恋だった。
「………」
暁都は黙ったまま少し目を細めた。
「(も、もしかして私のことを覚えていらっしゃらない!?)」
先行した不安に顔色を悪くする。
「……もしや。許嫁殿??」
恋の不安をよそに暁都はそう問うた
「は、はひ!恋にございます!」
唐突なことに変に声を裏返す
「…これは…お見かけしないうちに随分と大人びたな…」
そう言って笑みを浮かべる
「…挨拶が遅れて申し訳がない。2年前よりも大きくなっていて見違えた。」
「……は、伯爵様も長旅ご苦労様でした!」
そろそろと物陰から圭一郎の隣まで歩みそう言った。
「………」
「………」
再び2人の間に沈黙が流れる。
「…はははっ!流石に2年もあっていないと気まずいか??まぁ!私抜きで積もる話もあるだろう!恋、暁都くんを客室まで案内して少し話し相手になってさしあげなさい。その間に昼食を用意させよう」
気を利かせて圭一郎はそう言う
「いや……長居してはご迷惑では…」
「構わんよ!元々今日訪れることは分かっていたんだ。昼飯も君の分を用意させる前提で作らせている」
ゆっくりしていきなさい。そう言うと圭一郎は居間の方へと消えていった。
「……では、お言葉に甘えよう」
圭一郎の姿がなくなてしばらくして暁都はそう口にした。
「!は、はい!それではご案内いたします!(私ったら全然シュミレーション通りにことを運べてない!)」
悶々としながら暁都を客間まで案内する恋だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます