第64話:ゴリさんに抱き枕をプレゼントする

「うん? どうしたのクロちゃん?」

「あぁ、えぇっと、その……良かったらこの抱き枕、ゴリさんにあげますよ」

「え……って、ええぇぇえっ!?」


 という事で俺は思い切ってゴリさんにそう言ってみた。するとゴリさんは非常にビックリとしたような大きな声を出してきた。


 まぁクジ引きの大当たりの景品をあげるって急に言われたら普通はビックリするよな。だけどさ……。


(はは、だってゴリさん……めっちゃ目を輝かせながらこの抱き枕を見てたんだもん)


 ゴリさんは目を輝かせながらこの回復缶型の抱き枕をずっと見てきていたんだ。


 そしてゴリさんがそんなにも目を輝かせて欲しがってくれるのであれば、是非ともあげたいなって思うのは当然の気持ちだろう。


「え、い、いいのっ!? で、でもどうしてよ? クロちゃんこの抱き枕要らないの!? 回復缶型の抱き枕なんてユーモアたっぷりでめっちゃ良くない? だ、だから私にあげちゃうなんて言わないでさ……自分の家で使った方が良いと思うよ……?」


 そう言ってゴリさんはちょっとだけ心配そうな顔をしながら俺の事を見つめてきた。


 やっぱりゴリさんとしてもこの抱き枕は凄く欲しいという気持ちはあるんだろうけど……でもやっぱり当てた本人が使った方が良いだろうと思って必死に断ろうとしてきているんだ。


 だから俺はそんな心配をしているゴリさんのためにも、しっかりと笑みを浮かべながらゴリさんに向かってこう言っていった。


「あはは、確かに俺もこの回復缶型の抱き枕はセンスあってめっちゃ良いなって思いましたよ! でもこんな大きな抱き枕を担いでここから俺の家まで帰るのってはかなり難しいんですよねぇ」

「え……って、あ、そっか! そういえばクロちゃんって住んでる場所って埼玉の上側らへんだもんね。という事は確かにここからだと電車だけでも1時間半以上はかかっちゃいそうだよね……」

「はい、そうなんですよー。しかも乗り換えも沢山あるんでこんな大きな抱き枕を持って家に帰るのは流石に難しいんですよね」


 ゴリさんも俺がほぼ群馬県に住んでる事は知っているので、俺がこれを持って帰宅するのは難しいと言ったらすぐに納得はしてくれたようだ。


「だから正直な話、ゴリさんにこの抱き枕を引き取って貰えると俺としては凄く助かるんですよ。それにLPEX大好きっ子のゴリさんならきっとこの抱き枕をずっと大切にしてくれますよね? だからもし良かったら……この抱き枕を貰ってください!」

「く、くろちゃん……」


 という事で俺はゴリさんに抱き枕を受け取って貰えたら嬉しいんだという気持ちを素直に伝えていった。


「……うん、わかったよ。それじゃあクロちゃんが良いって言うんならさ……私がこの抱き枕を貰っても良いかな?」

「はい、もちろんですよ! そんで俺の分までずっと大切にしてくれたら嬉しいっす!」

「あはは、そんなの当然だよー! ふふ、それじゃあこの抱き枕はクロちゃんの分身だと思って毎日大切にぎゅーっとしてあげるね!」

「あはは、それは嬉しい……って、えぇええっ!? い、いやそれはちょっと微妙にニュアンスが……」


 唐突にゴリさんはちょっとえっちぃ感じの事を言ってきたので、俺は顔を赤くしながら少しだけ動揺していってしまった。


「あはは、冗談冗談! もちろんクロちゃんの分まで大切に使わせて貰うよ! 本当にありがとうね、クロちゃん!」

「ま、全くもう……はい、そう言ってくれると助かります。あ、でもゴリさんって池袋からは自宅までは近いんですかね? もしここからちょっと遠いようだったら、俺がゴリさんの最寄り駅まで抱き枕を担いで行きますよ?」

「えっ、本当に!? うん、ありがとう! それじゃあクロちゃんの御言葉に甘えて、最寄り駅まで抱き枕を一緒に運んでもらっても良いかな?」

「はい、了解です!」


 という事で俺はその回復缶型の抱き枕を担いでゴリさんの最寄り駅へと目指す事となった。確かゴリさん……というか紗枝先輩の最寄り駅はここから三十分くらいの駅だったはずだ。


「でも今日は本当にありがとねクロちゃん! 最後の最後にこんな良い物までくれるなんてさ! ふふ、本当にクロちゃんはすっごく優しい男の子だよね!」

「はは、そんなに喜んで貰えると俺も嬉しいっすよ」

「うんうん、本当に最高に嬉しい気持ちだよ! あ、そうだ! ふふ、それじゃあそんな優しいクロちゃんに感謝の気持ちとしてさ……クロちゃんの願い事を何でも一回だけ聞いてあげるよ!」

「えっ? マ、マジっすか?」


 コラボカフェからの帰り道でゴリさんはそんなワクワクとするような事を言ってきてくれた。


「あはは、ゴリさんが何でも願い事を聞いてくれるなんて最高のご褒美じゃないっすか。うーん、それじゃあゴリさんに何をお願いしようかなー」

「あはは、アタシに出来る事なら何でも良いよー? あ、良かったらアタシのおっぱいでも揉むかい?」

「あ、なるほどーそういうお願いもアリなんで……って、は、はぁっ!? そ、そんなお願いするわけないでしょ!!」

「えっ? ……あー、そっかそっか。そうだよね、クロちゃんは巨乳が好きなんだもんね。いや本当にごめんね……アタシのおっぱいはスカスカだから巨乳好きのクロちゃんには全然楽しめないもんね……ぐすっ……ぐすんぐすん」

「だ、だから俺を変態扱いしないでくださいって!!」


 という事でコラボカフェの帰り道でも俺はいつも通りゴリさんにからかわれていったのであった。

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