第59話:ゴリさんから一生のお願いを頼まれる

「あはは、それじゃあ今度こそ話し戻しますけど、俺に話があるって一体何の用なんですか? もしかしてゲームのお誘いですかね? それなら今すぐに準備しますよー」

『あぁ、いや今回はゲームのお誘いじゃないんだ。いや実はさ、クロちゃんにアタシからの一生のお願いがあるんだけどさ……良かったらそれを聞いて貰えないかなー?』

「え? ゴリさんからの“一生のお願い”……ですか?」


 いつも通りゲームのお誘いかなと思ったんだけど全然違った。ゴリさんは俺に向かって“一生のお願い”とかいうめっちゃ大層な事を言いだしてきた。でも……。


「……ふぅん、ゴリさんからの一生のお願い事かー……」


 でも俺はそのゴリさんの言葉を聞いた瞬間にちょっとだけ気の抜けた返事をしていってしまった。


『……え? い、いやちょっとクロちゃん! 何なのその気の抜けた返事はさ! アタシが意を決して一生のお願いをしてるんだからもっと真面目な態度で聞きなよ! 相手が真面目に話してるのにそうやって失礼な態度で聞くのはお姉さん良くないと思うなー!』


 するとゴリさんはちょっとだけ語気を強めながら俺にそんな注意をしてきた。


 でも俺がゴリさんのお願いに対して気の抜けた返事をしてしまったのにはもちろん理由があるんだ。それは何故かと言うと……。


「え? いやだって俺はゴリさんからの一生のお願いってやつを今までにもう10回以上も聞いてるんですけど? ゴリさん“一生のお願い”の意味わかってます??」

『え、あ、あれ? そ、そうだっけ?』

「はい、そうなんですよ。ゴリさんはいつも気軽な感じで俺に一生のお願いを何回も頼んできてるんですよ。え、まさか忘れてたとは言いませんよね??」


 という事で俺が気の抜けた返事をしてしまった理由は単純にゴリさんからの“一生のお願い”を今までに何回も聞いてきたからだ。そしてそのゴリさんからの“一生のお願い”というのは毎回しょうもないお願い事だった。


『あー……うん、そっかそっか! あはは、それはクロちゃんに悪い事をしちゃったね! あ、でもさ? それじゃあもう一回分クロちゃんへの一生のお願いが増えた所でさ……それってもはやただの誤差だよね?』

「は、はい……?」

『あー良かった良かった! それじゃあ今回もクロちゃんはアタシの一生のお願いを聞いてくれるって事なんだね! いやー本当にありがとねクロちゃん!!』

「え……えっ? い、いやちょっ……」

『いやもうアタシからの一生のお願いをいつも嫌な顔をせずにしっかりと聞いてくれるなんて本当にクロちゃんは最高だよー! あはは、それじゃあ今日もアタシの一生のお願い事を聞いてくれてありがとねっ!』

「い、いやちょっと待って! 色々とおかしいから!!」

『うん? どしたんクロちゃん?』

「い、いや、えっと、その……今ってゴリさんがお願いしてる立場なんですよね? それならもう少し誠意のあるお願いをして貰いたいんですけど……?」

『え? いやだからさっき猫撫で声でお願いしたじゃんね? それで許せよ。アタシの全てを』

「いやそれ絶対に誠意の見せ方じゃな……って、は、はぁ!? ゴリさんの全てを許せって!? いやそんなん無理に決まってるでしょ!!」


 ゴリさんが真剣な声でそんな事を言ってきたので俺は盛大にツッコミを入れていった。


「は、はぁ……全くもう。さっきゴリさんは俺に対して何だか色々と文句言ってましたけど、ゴリさんだってそんな傍若無人な態度ばかりしてたら将来絶対に地獄に落ちますよ?」

『えっ!? まじかぁ、私は地獄に落ちちゃうのかぁ……うーん、わかった! それじゃあそん時は地獄で一緒にリアルFPSごっこでもして遊ぼうねクロちゃん!』

「いや絶対にお断りしますわ!」


 そんな感じでいつも通りゴリさんと賑やかに口喧嘩をしてたらもう既に20分以上もの時間が経ってしまっていた。


 まぁいつも通りの俺達らしいけど、でもこんなんじゃいつまで経っても本題に入れないと思ったので、俺は話をぶった切って今度こそ通話の理由を尋ねていった。


「えっと、それで結局の所、俺に用事って一体何なんですか? 何か頼み事でもある感じっすか?」

『あ、うん、すっかり忘れてたよ! えっとね、実はアタシさ……“ここ”に行ってみたいんだよね!』

「ここ? それって何処の事ですか?」

『あ、今ちょうどクロちゃんにURL送ったから、ちょっとそれクリックしてみてー!』


―― ぴこんっ♪


「あ、はい、わかりました! それじゃあ早速見てみますね」


 そう言ってゴリさんは何処かサイトのURLを貼り付けてきた。それにしても一体何のサイトなんだろう?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る