第54話:七種先輩と一緒に買い物に出かける

「よし、それじゃあ早速買いに行くわけだけど、神木君はどんなノートパソコンを買えば良いと思う?」

「え? えっと、生徒会で使うわけだからそこまで高スペックな物は必要ないので、まぁ必要最低限のソフトが入ってれば何でも良い気はしますね」

「うん、そうだね。まぁワードとエクセルとパワポが使えればそれで十分なんだけど……でもあと一つだけ気にしておくポイントがあるんだ」

「え? そんなポイントがあるんですか?」


 七種先輩が気にしておくポイントがあると言ってきたので、俺はどんな事なのかと尋ねてみた。


「うん、あのさ、生徒会のパソコンって結構な頻度で色々な所に持ち出すでしょ? 打ち合わせの議事録を取るために会議室に持って行ったり、全校集会で体育館に持って行ってプロジェクターに繋げたりとかさ?」

「あー、そう言われてみたら確かにそうかもですね」

「だよね。だから色々な所に持ち出す事を考えるとさ、出来るだけ耐久面に優れてるパソコンにしといた方が良いと思うんだよね。ほら、移動中に誰かとぶつかってパソコンを地面に落としちゃう事だってあるかもしれないし、落としたりぶつけたりしても壊れにくいパソコンを選んだ方が良いと思うんだよね」

「な、なるほど。それは本当に大事な視点ですね!」


 七種先輩が言ったように生徒会のパソコンは外に持ち運ぶ事がちょくちょくあった。それで持ち運んでる最中に落としそうになったり、何かにぶつけてしまうという事は決して無い事ではなかった。


 だから先輩の言った耐久面に優れているパソコンを買うというのは生徒会にとっては一番大事なポイントだと思った。


「うん、そうだよね。よし、それじゃあ今日買いに行くパソコンはそういう視点で買っておこうか」

「はい、わかりました!」


 という事で俺達はどんなパソコンを買うべきかを事前に話し合ってから家電量販店へと向かって歩いて行った。


◇◇◇◇


 それから一時間後。


「よし、それじゃあ今日のお仕事は終わりだね!」

「はい、本当にありがとうございました!」


 家電量販店にて目当てのノートパソコンを買い終えた俺達はそのまま家電量販店から出てきた所だった。もちろん購入した荷物は俺が全て手に持っている。


「いや今日は先輩について来て貰って本当に助かりましたよ。俺一人だったら高スペック重視で買っちゃってたと思うんで……この恩は一生忘れません!」

「はは、そっかそっか。うん、神木君の役に立ったのなら本当に良かったよ。あ、そうだ、まだ時間も早いし良かったら一緒にお茶でもしていかない? ちょっと歩き回って疲れちゃったしね」


 七種先輩はそう言いながら軽く背伸びを始めていった。まぁさっきまで家電量販店の中をひたすらと歩き回っていたので先輩が疲れてしまったのは無理もないよな……。


「あ、はい! もちろん良いですよ。あ、それじゃあ……先輩にはパソコン選びに付いてきて貰ったお礼も兼ねて、今日は俺が奢りますよ!」

「んー? あはは、後輩君が何言ってんのよー? 後輩の子達を助けるのが先輩としての役目なんだから、神木君はそんなの気にしなくていいんだよ。というかむしろ神木君こそ休みなのにさ、学校の為に仕事をしてくれたんだから本当に感謝だよ。だからさ、今日は私がそんな頑張ってくれた神木君のために奢ってあげるよ!」

「え……えっ? で、でもそれは……」

「あはは、いいのいいの! というかこういう時くらい先輩風を吹かせてよー。もうそろそろ私も生徒会を卒業しちゃうんだしさ」

「……えっ? あっ……」


 ふいに七種先輩はそんな事を俺に言ってきた。


 この学校の生徒会の任期は年間制ではなくて前期と後期の二期制に分かれている。 前期は4月~9月まで、後期は10月~3月までとなっている。だから七種先輩が生徒会で活動出来るのは後2~3ヵ月しかないという事だ。


(そう考えると……何だか凄く寂しい気持ちになるな……)


 それにしばらくしたら三年生は受験のために自由登校に切り替わる。そうなると七種先輩と学校で会える事はめっきりと減っていってしまうだろうな……。


「……うん? どうしたの神木君?」

「え? あ、あぁいや……もうすぐ七種先輩や北上先輩が生徒会から居なくなっちゃうと思うと、何だか寂しいなって思っちゃいまして……」

「……そっかそっか。ふふ、神木君がそんな事を思ってくれるなんて凄く嬉しいけどさ……まぁでもまだあと少しは私も玲奈も生徒会にいるんだからさ、まだそんな悲しい気持ちになんてならないでよー?」

「そ、そうですよね。すいません、ちょっとしんみりとした空気にさせちゃって……」

「ううん、全然良いんだよ。ふふ、まぁでもさ、私も玲奈もこうやって生徒会の先輩達にはいつも優しくして貰ってきたんだよね。だから神木君もさ……ふふ、今までの先輩達のように優しい先輩になってあげるんだよ?」


 俺がしんみりとした空気を作ってしまうと、七種先輩はそう言っていつも通り優しく柔和な笑みを浮かべ続けていってくれた。


「……はい、わかりました!」


 だから俺はそんな誰よりも優しい七種先輩の言葉を聞いて、しっかりと大きな声で返事を返していった。


「うん、良い返事だ! よし、それじゃあしんみりとした空気はこれで終わりにして近くのカフェでお茶しようか! ほら、こっちだよ!」

「は、はい!」


 という事で俺達はそのまま二人で近くのカフェでお茶を飲んでから今日は帰る事となった。

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