第53話:そして土曜日の朝

 それから数日後の土曜日。


「ふぅ……」


 七種先輩と待ち合わせをした駅前で俺は待機していた。今日はいよいよ七種先輩と一緒にノートパソコンを買いに行く日だ。


(うーん、でも早く来過ぎちゃったかな)


 俺はスマホの時計を確認してみる。まだ待ち合わせの時間までは三十分くらいある。この日を楽しみにし過ぎていた俺は待ち合わせ時間よりもかなり早くに到着してしまった。


(ま、のんびりと待つしかないか)


 という事で俺はスマホをしまって七種先輩がやって来るのをひたすらと待つ事にした。うーん、それにしても……七種先輩の私服姿って一体どんな感じなんだろうな?


 前回のゴリさんとのオフ会の時には三つ編み&メガネの図書委員スタイルにオシャレなニットワンピース姿でやってきてくれた。


 もちろんあの図書委員スタイルは非常に可愛くて俺は終始ドキドキとしてしまったわけだけど……でもアレは七種先輩が俺の“お願い”を聞いてくれたから実現した図書委員スタイルだ。


(だから普段の七種先輩の私服姿がどんな感じなのか……うーん、めっちゃ気になるよなぁ……)


 俺はそんな事を思いながら七種先輩の私服姿を少しだけ想像してみる事にした。


 七種先輩は可愛い服も似合いそうだし、大人っぽい服装も似合いそう。あとは意外な所で素肌を露出させちゃうギャルっぽい服装だって先輩なら完璧に着こなしちゃいそうだよな。


 うん、やっぱり七種先輩ならどんな服装でも完璧に着こなせそうな気しかしないわ。


(いや本当に先輩の私服姿が物凄く気になるよ……早く先輩来ないかな……)


 という事で俺は先輩の私服姿をとても楽しみにしながら先輩が待ち合わせ場所にやってくるのを待つ事にした。


◇◇◇◇


 そしてそれから十分後。


「あっ! おーい、神木君ー」

「……ん?」


 待ち合わせ場所で待機していると急に後ろから俺を呼びかける声が聞こえてきた。という事で俺は後ろを振り返ってみると……。


「……って、あっ! さ、七種先輩! お疲れさまです!」

「うんうん、お疲れ様! でも神木君来るの早いね。もしかして結構待たせちゃったかな?」

「……えっ!? あ、い、いえ全然っす! 俺もさっき来たばっかりですから!」

「あぁ、うん、それなら良かったよー」


 という事で俺は無事に待ち合わせ場所で七種先輩と合流する事が出来た。


 だけど俺は七種先輩の私服姿に見惚れてしまい、七種先輩に挨拶する反応が少しだけ遅れてしまったのであった……。


(い、いやでも……先輩って本当にセンスがめっちゃ良いよな……今日の服装も先輩に物凄く似合ってて綺麗だな……)


 という事で今日の七種先輩の服装はハイウエストのスキニーパンツにシンプルなトップス、さらに透け感のあるアウターを羽織っていて、何とも春夏っぽい爽やかなコーディネートだった。


 七種先輩は168センチと高身長でスラっとしたスタイルのため、ハイウエストのスキニーパンツを着ているとその長い脚がさらに際立って本当に凄かった。何というか普通にモデルのお姉さんがやって来たのかと思うくらいに凄く似合っていた。


 そしてもちろん今日は三つ編み&メガネの図書委員スタイルではなく、普段の黒髪サラサラロングヘアの七種先輩の姿でやって来てくれた。


(いやそれにしても……マジですっごいよなぁ……)


 俺はそんな七種先輩の姿を見て感嘆の声を心の中で呟いていっていた。


 前回のオフ会での先輩の姿はオシャレかつ可愛い感じだったので、何というか前回のオフ会では“ゴリさん”と会っている感がちゃんとしたんだ。


 でも今日の先輩の姿は大人っぽいお姉さんオーラが物凄く出ていて、これはもう完全に“七種先輩”と会ってる感しかしない。なので今日の七種先輩からはゴリさん味は一切感じなかった。


(いやゴリさんも七種先輩も同一人物なのに……着ている服や醸し出す雰囲気だけでこんなにも違ってくるなんて本当に凄いよなぁ……!)


 服装や雰囲気だけでこんなにも印象が全然変わるなんて凄いなと思いつつも……でもゴリさんの図書委員スタイルも凄く可愛くて好きだったし、今日の先輩の大人のお姉さんスタイルもとてもオシャレで大好きだなぁ……


「うん? どうしたの、神木君?」

「え……えっ!? あ、あぁ、いや! な、何でも無いです!」


 そんな感じで七種先輩の姿にずっと見惚れ続けてしまっていたら、ふいに先輩は心配そうな顔をして俺の事をジッと見つめてきた。


 なので俺は顔を真っ赤にしながらも慌てて何でもないと誤魔化していった。

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