第29話:ゴリさんと一緒に喫茶店でお茶をする
さぁ、楽しみにしていたオフ会の始まりだ! ってそんな事言ってる場合じゃねぇ!!
という事で“ゴリさん”もとい“七種先輩”と無事(?)に合流出来た俺は、当初の予定通りゲーセンに……行けるわけもなく、とりあえずお互いに一旦落ち着くためにも駅前の喫茶店に入る事にした。
「アイスコーヒーのMサイズ2つお待たせしました」
「ありがとうございます。 あ、私ガムシロップ要らないんで大丈夫です」
「あ、俺も大丈夫です」
「はいわかりました、それではごゆっくりどうぞ」
注文した飲み物を店員さんから受け取った俺達は、とりあえずボックスシートの席に座りながらそれを飲んで一息ついていた。
(……いや何だこの状況??)
さっきの出会い方があまりにも衝撃的すぎたせいで、俺は今でも七種先輩と一緒にアイスコーヒーを飲んでいるこの状況を理解出来ないでいる。 いやそもそも七種先輩って本当にゴリさんなのか? 実はドッキリとかなんじゃないのか?? 俺はそう思って素直に先輩に尋ねてみた。
「えぇっと、改めて確認なんですけど、先輩がゴリさんって事で合ってるんですか?」
「んー? ふふ、どうなんだろうねぇ……w」
「いやその笑いながらはぐらかす感じ絶対にゴリさんじゃないっすか!」
七種先輩はニヤニヤと笑いながら答えをはぐらかしてきた。 いや本当に信じたく無いんだけど……でもこの笑いながらおちょくってくる感じはゴリさんにしか思えない。
(いやでもなんというか……ギャップが凄まじいな)
だって俺の知ってる七種先輩はいつも優しくて柔和な笑みを浮かべてる人なんだよ? そんな人がこんな風にニヤニヤと小悪魔的に笑ってくるなんて今まで想像すらした事もなかった。
……あ、もちろん想像上のゴリさんは毎日ドヤった表情をしたりニヤニヤと悪魔じみた顔で笑ってそうだなっていうイメージはあったけどね!
(……ん、あれ? って、ちょっと待てよ!?)
その時、俺はとある事に気づいてしまった。 いやもし本当に“ゴリさん=七種先輩”なのだしたら……も、もしかして俺って“好きな人”に“好きな人”の事を相談してたのかよ!?
それに気が付いた瞬間、俺は顔から火がでそうな程恥ずかしい気持ちになった。 しかもこんなの当然だけど七種先輩も気づくに決まってるじゃん!
(もしかして……もう先輩にバレてたりするか……?)
内心ではかなり焦っているんだけど……でもそれよりも今は七種先輩の様子の方が知りたかったから、俺はバレないように先輩の顔をチラっとだけ確認してみた。
「……ん?」
(……あ、や、やばい……!)
でもその瞬間、不運にも先輩とバッチリと目が合ってしまった。 い、いや非常に気まずいんだけど!
「んー? どしたん、クロちゃん?」
「え!? あ、い、いえ何でもないっす……」
目が合うと先輩はキョトンとした表情で俺にそう尋ねてきた。 いやどうしようかなり気まず……って、あれ? でもなんだろう? 先輩からは俺に対して何か気にしてるような様子とかは感じられないような……って、え!? も、もしかしてこれってまだバレてないんじゃ……?
(そ、そんな俺に都合の良い展開があるのか!?)
ラブコメ系のラノベでありがちな「え、今なんか言ったか??」って連呼するような超鈍感級の主人公じゃない限り普通は気が付くに決まってるだろ! それに今までどれだけゴリさんに七種先輩の事を話してきたと思ってんだよ!
(いやそれでも今の俺にはもう自分に都合の良い方を信じるしかないんだ!!)
大丈夫だよ! だって今日の俺の運勢は4位なんだぞ? だから大丈夫だって! 先輩はまだ気づいてないって信じようぜ……!
(まぁでももしそうだとしてもバレるのは時間の問題だけどな……)
少しでも今までの通話内容を思い出してしまったら、どう足掻いてもバレるに決まってる。 だから今の先輩には考えさせる時間を少しでも与えさせたくはない。 何でもいいから何か話題を作らないと……!
(う、うーん、でもどうしたもんか……って、あれ? そういえば……)
何でも良いからとりあえず話題を作るためにここ最近の学校での出来事を思い出そうとしていた。 そしてその時、俺は休み時間に自販機の前で七種先輩と出会ったあの日の事をふと思い出した。 そういえばあの時話した内容って……
「……あっ! そ、そういえば、なんすかあれ! “私ゲーム下手なんだよねぇ……”って! あれメチャクチャ嘘じゃないっすか!!」
「んー? あぁ、そういやそんな事も言ったっけね、あははー!」
よく考えてみたらこの人めっちゃ嘘ついてるじゃん!! 何がゲーム下手だよ! 俺なんかよりも遥かにゲーム上手いじゃん!!
「いやでもクロちゃんちょっと話を聞いてよ! ゴリゴリにゲーム上手いけど毎回煽ってくる厄介ゲーマーな女の子よりもさぁ、ゲーム全然出来ない下手っぴだけど毎回頑張ってる健気な女の子の方が可愛いと思わない??」
「いやそんなん当たり前っすよ! でもゴリさんは圧倒的前者ですからね!?」
「え?? いやいや何言ってんのクロちゃん、そんな訳ないでしょ?? それにアタシだって嫌だよ、格ゲー初心者相手に当て投げでハメて気持ち良くなってる女の子なんてさぁ……絶対にヤバすぎるから友達になりたくないもん」
「いやだからそれまんまゴリさんの事じゃん! ってしかもヤバイ自覚もあったんかい!!」
「あははっ、まぁまぁ……って、あれ? いやでもクロちゃんさぁ……」
「え、な、なんすか?」
すると突然、七種先輩はニヤニヤと笑いだしながら俺の方を見てきた。 いやあまりにも怖すぎるんですけど?
「そういえばさぁ、アタシあんまり知らなかったんだけど君はゲームがめっっっちゃ得意なんだってね? それでさぁ……ふふ、確か私と会った前日にもクロちゃんは“お友達”をボッコボコにしてたらしいねぇ??」
「ぐっ……い、いやそれは」
「いやぁ知らなかったなぁ、クロちゃんってそんなに強かったんだねぇ! んーでもさぁ、確か私の記憶が間違って無ければさぁ……その“お友達”はクロちゃんにボッコボコにされた事って一度も無いはずなんだけどなぁ? あれでもそれっておかしいよねぇ? それじゃあクロちゃんは一体何処の誰をボコボコにしたのかなぁ? ねぇねぇ一体誰の事をボコボコにしたのかなぁ?? ほらほら黙ってないでお姉さんに教えてみなよー??」
「ぐ、ぐぎぎ……」
いやもう認めるよ! 目の前にいる人完全に七種先輩の顔被った脳筋ゴリラだわ! この煽り方は本物のゴリさんだよ!! そして何だかもういつも通りの光景すぎて実家のような安心感だよちくしょうっ!!
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