第28話:いよいよゴリさんとの初対面……って、えっ!?

 日曜日の早朝、今日はゴリさんとの初めてのオフ会の日だ。


『今日の星座占いコーナー!』

「ん-?」


 俺はリビングで朝ごはんのトーストを食べながら朝の情報番組を見ていると、番組の途中で占いコーナーが始まった。 さて、今日のしし座の運勢はどうかな?


『第4位はしし座のアナタ! 今日はやる気が高まりやすくて新しい事を挑戦するには良い一日! 早めの行動を心がけるとさらに運が良くなるかも!』

「おー、良い事言うじゃん」


 今日の俺の運勢はそこそこ良いらしい。 まぁあんまり占いとかは信じないタイプなんだけど良い事を言われたらちょっと信じちゃうよな。


「じゃあ言われた通り今日は早めに到着するようにしようかな」


 俺はトーストの残りをさっさと食べてテレビの電源をオフにした。 そして今使っていた食器を軽く洗ってから自室に戻り、そのまますぐに出かけられるように身支度を整えた。 まぁ身支度と言っても歯を磨いてジャケット羽織ったらもうそれで準備完了なんだけどさ。


「これでよし、と」


 パッと身支度を整えた俺は時計を確認する。 うん、だいぶ予定よりも早いけど、まぁ早めの行動をすると運が良くなるって言われたし今日はそれに従ってみよう。


「さて、それじゃあ行きますかね!」


 俺はそう言ってサイフとスマホを入れたバッグを手に持って家から出た。


◇◇◇◇


 時刻は9時50分。 俺は生まれて初めて秋葉原に降り立つ事が出来た。


「ここがアキバかぁ……!」


 秋葉原駅の改札から出た俺はちょっとだけ嬉しくなりそう一言だけ呟いた。 そして俺はそのまま駅前の周辺をキョロキョロと見渡してみる事にした。


「ほうほう……!」


 駅から出てすぐ目の前にはゲームセンターと家電量販店が並んでおり、そしてその隣にはかの有名なラジオ会館が大きく立っていた。


「おー、あれが有名なラジオ会館ってやつだ!」


 あんまりよくは知らないんだけど、それでも秋葉原の有名な建物であるラジオ会館を俺は初めて生で見る事が出来て良かった。 えっと、確か数年前に新築したんだっけ?


(いやラジオ会館って名前はめっちゃ有名だけどさ、結局あれって何の建物なんだろう? ラジオ売ってるお店……なわけないよな? ラジオ放送局ってことかな?)


 今から10年以上前にアキバを舞台にした某アニメがめっちゃ流行っていて、そのアニメでラジオ会館が物凄い重要な建物だったってのは知ってるんだけど……俺はそのアニメを見た事がないから、ラジオ会館の事は物凄い有名な建物って事しか実は知らないんだ……にわかオタですまん……


 でもあたぎさんにそれを伝えたら 「いやそれアニメもめっちゃ出来が良くて面白いんやけど……でも出来る事ならゲームをやって欲しい……! さらに出来る事ならネタバレを一切踏まないで一気にプレイしてみて欲しい……! 頼むぅ、一生のお願いやぁ……!」 と熱弁されたから俺は未だにそのアニメを見てないんだ。 そんでそのゲームは長期休みなったら買ってみて一気にプレイしてみようかなと思っている。


(……ま、先取りした聖地巡礼って事で!)


 そんな事を思いながらラジオ会館をじーっと眺めていたんだけど、他の建物や周りのお店にも興味があったので、俺はその周辺をもう少しだけ見渡してみた。


「へぇ、でもなんか思ってたよりもオタク街って感じじゃないんだなー」


 もっとメイドさんとかアニメとかのオタクカルチャーに特化したディープな街並みなのかなーって想像してたんだけど思いのほか普通だった。 いや確かにアニメイラストの広告とかは所々あるんだけど、それでも別に「めっちゃオタクな街!」って感じでもない気がする。 もう少し奥に行ったらディープな街並みになるのかな? いやわからんけど。


(おっと、そういや今何時だろ?)


 スマホで時間を確認してみると現在の時刻はちょうど10時になった所だ。 ゴリさんと約束してる集合時間は10時半だから、もう少しだけ時間がある。


「んー、まだ集合まで時間あるし、もうちょっとだけぶらぶらしてみようかな?」


 俺はそう思って駅前から少しだけ歩いてみる事にした。 とりあえずまっすぐと大通りに出てみるとメイドさんが立っていたのでちょっと感動した。 そしてその大通りに沿って歩いてみる事にしたんだけど……その時、俺はある事に気が付いた。


「いやゲーセン多すぎない??」


 駅を出てすぐ目の前にゲーセンがあったのに、少し歩いたらまたゲーセンがあって、さらに少し歩いたらまたゲーセンがあった。 それもギ〇ゴ(旧セ〇)やタイトース〇ーションにレジャー〇ンドなど沢山の店舗名のゲームセンターが建っていて普通にビックリした。 え、何ここ? ゲーセン版アベンジャーズじゃん。


「うわぁ……ワンプレイだけでもしてぇ……」


 こんだけゲーセンがあると誘惑に負けて一人で今すぐにでも入店しちゃいそうになるけど、でも数十分後にはゴリさんと一緒に行くわけだし……うん、ここは我慢しよう。 俺はそう思いながら目の前に立っているゲーセンには入らずに街の探索を続けてみた。


◇◇◇◇


 時刻は10時20分。 俺は駅周辺の探索を一旦止めて、ゴリさんとの集合場所にしていた駅前に戻ってきた。 ゴリさんからはあと5分以内には到着すると連絡がきたので、俺は集合場所でゴリさんが到着するのを待っていた。


「ふぅ……」


 さっきまで緊張とかは全然してなかったんだけど、やっぱり会う直前になると緊張してきた。 3年以上の付き合いがあると言ってもリアルで会うのはこれが始めてだし、そもそも女子と2人きりで遊ぶのも初めてなわけだしさ。 まぁそれでも……


「はは、楽しみだなー」


 昨日の夜にも思ったけど、やっぱり何だかんだいって緊張よりも楽しみな気持ちの方が上回っていた。 あとさっきのアキバ探索では想像していたよりも沢山のゲーセンがあってビックリしたんだけど、この後ゴリさんと合流出来たら色々なゲーセン巡りとかもしてみたら面白そうだなー。 とかそんな事を思っていたらスマホから通知音が鳴ったので、俺はスマホを確認してみた。


『もうすぐ着くよー』

『了解です、服装とか教えて貰えますか?』

『あぁいや、アタシがクロちゃんに声かけるからそっちの服装教えて』


 ゴリさんからもうすぐ着くから俺の服装を教えてくれと連絡が来た。 まぁ確かに初対面の男から声かけられるのは女子的にはちょっと怖いよな。 俺はそう思ってゴリさんに今着てる服装を伝えた。


『わかった! じゃあ着いたら声かけるから集合場所で待っててね』

『了解っすー』


 ゴリさんに服装を伝えるとすぐにそう返信が返ってきたので、俺はその集合場所にゴリさんが来るのを待った。 それから程なくしてこちらに近づいてくる女性が1人いた。 うーん、あれがゴリさんなのかな? まだちょっと遠いからわからないけど……って、あれ? あ、あのヘアスタイルってまさか……?


(……あっ! な、なるほど、そういうことか!)


 その時ようやくゴリさんが通話で言っていた“俺との約束”が何の事を指していたのかわかった。


“いつかクロちゃんと会う事があったら……うん、そん時はしょうがないなぁ! 三つ編にメガネかけた文学少女スタイルで会ってあげるわ、あははっ!”


 ……うん、まさにそんな特徴の女性が俺の方に近づいてきた。 その女性は黒髪ロングでオシャレなサイド三つ編みヘアにし、オシャレな丸いメガネをかけていた。 そして服装はシックな雰囲気で、全体的にとても大人っぽい雰囲気を出していた。 い、いやちょっと待ってくれって……!


(い、いやこの人がゴリさんなのか!? な、なんなんこの人!? 本気出し過ぎでしょ!?)


 ごめんなさいすいません先ほどの発言は撤回させてください、緊張感がもの凄い事になっていて非常にヤバいです、誰か助けてください……!!


 俺は内心焦りすぎて若干挙動不審気味な態度になっていたんだけど、その女性はそんな事はお構いなしにどんどんと近づいてきて……そして俺の目の前で立ち止まった。 大きめのメガネをかけているので俺はまだ彼女の顔をちゃんとは見れてないんだけど……でも確かに雰囲気はかなりの美人さんのように見えた。


 それに身長も高くてスラっとしたモデルさんのような体型をしており……って、あれ? 何だか俺の身近にも彼女とほぼ似たような体型をしている女子が1人いたような?


「すいません、クロさん……ですか?」


 近づいてきたその女性に対して俺は沈黙しながらそんな事を考えていると、彼女は怪訝そうな感じで声をかけてきたので俺は慌てて返事を返した。


「あ、は、はい! そうで……って、あれ?」

「?」


 ん……あれ? 今度はなんだろう? この甘い香り……これは彼女が使っている香水の香りなのかな? いやでもこの香りをつい最近にも俺は何処かで感じた事があるような気が……?


「え、ど、どうかしましたか?」

「あ、い、いやなんでもな――」

「え!?」

「え?」


 俺が“なんでもないです”と言おうとしたその瞬間、目の前の女性は突然大きな声を出してきた。 俺はそれにビックリしてしまいつい彼女の顔をじっと見つめてしまった……って、あれ? えぇっと……いやちょっと待って?? あ、あれ? 俺この人何処かで見た事がある気が……



「「あ゛っっ!?」」



 いやどこかで見た事があるどころじゃない!! ほぼ毎日学校で見かけてるじゃん!!


「か、神木君!?」

「さ、七種先輩!?」


「「どうしてここにっ!?」」


 俺の目の前に立っていためっっちゃ美人な三つ編みメガネ女子の正体は……俺と同じ高校に通っている最も敬愛している先輩だった。

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