第15話:七種先輩のやってる作業の手伝いをしていく

 授業終わりの放課後、俺は生徒会の打ち合わせがあったので生徒会室に来ていた。


 打ち合わせ自体は1時間程度で問題なども無く無事に終わり、そのまま今日の仕事が無い生徒達は順次帰宅している所だった。 俺も今日は仕事は何も残っていないのでこのまま帰ろうかなと思って席を立ち上がった。


(ん? あれは……)


 俺は席を立ち上がりながら背伸びをしていると、少し離れた席に七種先輩が座って何か作業をしている事に気が付いた。 そしてそんな七種先輩は今日は珍しくメガネをかけていた。


(うーん、メガネ姿の先輩も良いなー)


 俺はそんな珍しいメガネ姿の先輩が見れてテンションが上がった訳なんだけ……いやそんな事思ってる場合じゃないだろ。


 七種先輩が何をしているのかをチラっと見ていると、手前に置いてあるノートパソコンに向かってカタカタと文章を打ち込んでいる所のようだった。


(……よしっ!)


 俺は帰宅する足を一旦止めて、そのまま先輩の方に近づき声をかけた。


「あ、先輩、お疲れさまです。 打ち込み作業とかなら俺がやっておくんで先に帰ってもらっていいですよ?」


 俺はパソコン作業をしている七種先輩に向かってそう声をかけると、七種先輩は柔和な笑みを浮かべながら俺に手を振ってきた。


「ううん、大丈夫だよ、自分の仕事だしね。 神木君も今日のお仕事はもう無いようだったら先に帰っちゃって大丈夫だよ」

「え? で、でも」


 七種先輩は生徒会では書記を担当している。 俺の学校での書記の役割は、体育祭・文化祭など各学校行事の告知やポスター作成、あとは毎月発行している生徒会新聞の作成などが担当になっている。 ようはパソコンを使う作業が主な仕事内容だ。


「で、でも先輩も受験勉強とかで忙しいんじゃないですか? それにこれくらいの作業だったら俺でも出来ますよ?」


 今先輩がやっているのは生徒会新聞の手書きの原稿をパソコンに打ち込む作業だ。 打ち込む内容は決まってるのだから俺でも全然出来る作業内容だ。


「あはは、気を遣ってくれてありがとうね。 でも毎日勉強ばっかりしてたら疲れちゃうからさ。 だから逆にこういう打ち込み作業も頭使わなくて良いから楽しかったりするんだよね」

「あ、あぁ、なるほど」


 確かにこういう単純作業は脳を休めるのには良いのかもしれないな。 俺としては、何かしら七種先輩の役に立てるんなら嬉しいなと思って声をかけたんだけど……まぁ要らないお世話だったかな。


「あ、でも……うん、それじゃあ半分だけ手伝ってもらえるかな?」

「え?」


 俺はそんな事を思いながらちょっとだけションボりとしていたら、突然七種先輩にそう言われた。


「あぁ、うん。 あのね、今日の原稿はちょっと多いからさ、もし時間があるなら少しだけでも手伝って貰えたら嬉しいなって」

「っ! は、はい、わかりました! それじゃあ早速準備しますね!」


 七種先輩にそう言われたので、俺は急いで生徒会用のノートパソコンが置いてある備品棚に駆け足で向かった。


「……ふふっ」

「ん? どうしました先輩?」


 俺は備品棚からノートパソコンを取り出している時、ふと七種先輩が小さな声で笑っているのに気が付いた。


「ううん、何でもないよ……ふふっ」

「?」


 先輩が小さく笑っていたのが気になったのでそう尋ねてみたのだけど、先輩は気にしないでと言ってきた。


(う、うーん?)


 七種先輩の謎の微笑みが気にはなったけど……まぁそれよりも早く作業を終わらせた方が良いよな。 そう思って俺は備品棚からノートパソコンを取り出し、そのまま先輩の隣の席に座った。


「うん、じゃあこの打ち込みお願いしてもいいかな?」

「はい、わかりました!」


 俺はそう言って先輩から手書きの原稿用紙を受け取った。 うん、これくらいなら20~30分もあれば終わるだろう。


「これなら二人でやればすぐに終わりそうですね」

「うん、そうだね、ありがとう神木君。 あ、じゃあさ、早く作業が終わったら、手伝ってくれたお礼に帰りにコンビニで何か奢ってあげるよ」

「え、いいんですか? って、え!? そ、それって、先輩と一緒に帰ってもいいんですか!?」

「うん、もちろんだよ。 じゃあさっさと片付けちゃおうっか」

「あ、は、はい、わかりましたっ!」


 その言葉を聞いて俺のテンションが一気に跳ね上がった。 いやそれよりも七種先輩と二人きりで帰るなんて今まで一度もしたことが無いからめっちゃ緊張するんだけど! まぁでも……


(先輩の役に少しでも立てれて良かったな)


 俺はそんな事を思いながらノートパソコンの電源を入れ始めた。

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