第13話:久々にあたぎさんと遭遇する
「んー、今日もゴリさんはいない感じかな?」
その日の夜。 俺はいつも通りパソコンを立ち上げてすぐに通話チャットアプリを開いた。 そしてアプリ内にオンラインで表示されている名前を確認していったが、今日もゴリさんはオフライン状態になっていた。
「ま、勉強とかで忙しいよな」
ゴリさんに聞いてみたい話があったんだけど、まぁ自分の受験勉強の方が絶対に大事だしな。 ゴリさんに暇な時間が出来てまたネットに帰ってきてくれたら、その時にPC周りについての相談をしてみよう。
「まぁその前に自分で色々と調べなきゃな……って、あれ?」
ということで今日は検索エンジンのグルグル先生を使って、キーボードやマウスなどのオススメ製品をひたすらと調べる日にしようとしたのだけど……その時、ある珍しい人がオンライン状態になっている事に気が付いた。
“atagi:オンライン中”
「あ、あたぎさんいるじゃん! 珍しいなー」
そこには何と1ヵ月近くも失踪していたネトゲ仲間がオンライン状態で表示されていた。
―― あたぎさんー! 久しぶりっすね! ――
俺は懐かしい気持ちと嬉しい気持ちになりながらも早速チャットを飛ばしてみた。 するとすぐにあたぎさんから返信が来た。
―― おー、クロ君おひさ! 元気してた? ――
―― めっちゃ元気っすよ! あ、暇だったら何か一緒にやります? ――
―― 何かって何よww まぁいいよやろう! 通話しても良い? ――
―― おkっす ――
そんな感じで軽くチャットでやり取りを行った後、あたぎさんからすぐに通話が飛んできたので、俺はそれを受け取った。
『クロ君おつおつー』
「お疲れっすー! あたぎさんめっちゃ久しぶりっすね!」
『あはは、ホンマやねー』
以前も言ったように、あたぎさんはゴリさんと同じく“#FPSフレンド募集”で知り合ったゲーム仲間の女性だ。 当時のあたぎさんは大阪に住んでいる10代後半の専門学生で、暇な時間があまりにも多すぎるからゲーム友達を探していたと言っていた。
あたぎさんとは年齢もそこまで離れている訳でも無かったし、年下の俺やゴリさんにも親しく接してくれていたので、当時は俺、ゴリさん、あたぎさんの3人固定で一緒にゲームをやる事が多かった。
それから数年経った現在では20代前半の社会人となり、ゲームをする頻度はだいぶ減ったけど、それでも空いてる時間は俺やゴリさんと一緒にゲームをしてくれる優しい人だった。 ただし仕事が繁忙期とかになってしまうと頻繁にネットから失踪するんですけども。
「大体一ヶ月ぶりくらいですかね? 今回の失踪理由も仕事関係ですか?」
『うん、そうそう。 いやぁめっちゃヤバいわ、禿げそう。 ってかもう禿げたわ』
「あ、あはは……社会人は大変っすね。 あ、でも俺もゴリさんも結構心配してたんすよ?」
『あ、それは本当にごめんねー、こんな長い期間失踪しちゃってさ。 って、あれ? そういやゴリちゃんどしたん? オフラインなんて珍しいじゃんね?』
そう言うとあたぎさんは怪訝そうな声で俺に尋ねてきた。
「あぁ、えっと、ゴリさん今年受験なんでここ最近は勉強とかで忙しくてインはあまりしてないっす」
『あ、そういやそうだった、ゴリちゃんって今高三だもんね! 確かに今の時期は勉強とかで大変そうだよねー』
「はい、そうっすね。 あ、それでゴリさんからの伝言なんですけど“あんまりイン出来なくなるかもしれないけど、元気にやってるんで心配しないでね”とのことです」
『うんうん、了解。 いやー、受験勉強めっちゃ頑張ってほしいねー! 行きたい学校に是非とも受かってほしいわ!』
「本当にそうっすよね。 そんでゴリさんが無事に帰ってきたらまた三人でペクスしたいっすね!」
『うんうん、また皆でやろーね!』
そう言うとあたぎさんは楽しそうに笑いながらそう言ってくれた。 うん、俺もまた三人で固定チームで遊べる日を楽しみにしておこう。
「でもこれだけ長い間失踪したのって今回が初めてじゃないっすか?」
『うーん、そういえば確かに? 一ヶ月近くインしなかったのは今回が初めてかもね?』
「ですよね。 そんなに今回の仕事は大変だったんすか?」
『あぁ、いや、実は先輩社員が突然辞めちゃってね、しかも引継ぎも何にも無しでさ。 そんでね、そのしわ寄せが全部私に降りかかってきたんよ……もう死ぬかと思ったわ』
「そ、それは何というか……災難でしたね」
『ほんまによ全く……! しかもそのせいで今月の関西勢のオフ会に参加出来んくて泣きそうになったわ』
「いやそれは確かに泣きたくなるっすね……ん、あれ? ってか今更っすけど関西組ってオフ会とかしてるんすね。 クラメンの人達とですか?」
クラメンとは俺やゴリさん、あたぎさんがプレイしている“LPEX”にて一緒に所属しているクランのメンバーの事だ。 基本的にはこのクランに入ってる人達と一緒に通話しながらゲームをする事が多い。 ちなみにクランには最大で30人まで入る事が出来る。
『うん、そうそう。 クラメンで仲の良い関西勢の人達と時々会ってご飯食べる会だよー』
「なるほどー、なんだかオフ会って面白そうっすよね! 俺はそういうのした事ないんでちょっと羨ましいっす!」
『あ、そうなんや? うんうん、面白いよー! ……って言っても、飲兵衛しか集まらんから基本的にはただの呑み会なんやけどさー、あははw』
「あははー、あたぎさんも飲兵衛なんすか? って、あれ? つい最近まであたぎさんも10代だったはずですけどねー?」
『ん-? んふふ……w』
「あ、色々ともう察しましたわw」
『えへへーw クロ君は賢い子で助かるよw あ、でも未成年飲酒はしちゃ駄目よー』
「ははっ、それはもちろん了解っす。 いやーでもいいっすよね! 関西組のオフ会とか何となく楽しそうだなー」
『うんうん、楽しいよー! クロ君も関西に来る事があったらいつでも言ってね。 関西勢の皆でおもてなししてあげるからさー』
「おー、それは嬉しいっすね! もし行く事があったら是非是非!」
『あはは、任せときなー!』
そんな感じで、久々のあたぎさんとの通話は関西勢のオフ会の話で盛り上がっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます