第12話:いつかアキバにも行ってみたいなぁ

 あれから数日が経過した。 今は学校の授業休み中だ。


「はぁ……」

「どうしたの?」


 俺はため息をつきながらスマホを眺めていると、友人の志摩が後ろから声をかけてきた。


「んー? あぁ、志摩か。 いやここ最近パソコン周りの調子が悪くてさ。 もうそろそろ新しいの買わないといけないんだろうけど……その出費がなぁ……」

「あぁなるほど、それは大変だね。 パソコン周りって事はキーボードとかそういうのかな?」

「そうそう」


 ここ最近ゴリさんや他のフレンド達はリアルが忙しいようでネットにインしてこなかった。 だからこの数日間はソロでランクマ周回をしていたんだけど、キーボードやマウスなど周辺機器の調子が悪い事に気が付いた。


 なので昨日はPC周りの掃除や点検をずっとしていたんだけど、思っていた以上にキーボードやマウスにガタがきているようだった。 キーボードのWASDキーはだいぶへたっているし、マウスも左クリックが反応しづらくなっている。


 まぁでも当然だよな。 だってこれらを買い揃えたのは今から2~3年前だし、それからほぼ毎日使ってる訳だしさ。 もうそろそろ寿命なのかもなぁ……


(あ、そういえば、)


 消耗品という意味で言えば、俺が今使ってるヘッドセットもその頃に一緒に買ったやつだ。 もしかしたらあれにもガタが来てるかもしれないな。 今度誰かと通話する時に俺の声が聞き取りにくいとかあるか確認してみよう。


「ゲーム用の製品って何となくのイメージだけど、買い替えるのって結構お金かかりそうだよね」

「あぁいや、ゲーム用って言っても価格帯は高いのから安いのまで幅広くあるからさ。 ただし上の価格帯は青天井っていうだけで……」

「あ、あぁ、なるほどね」


 PC本体もそうなんだけど、その周辺機器も値段はピンキリだ。 安い物は滅茶苦茶安いし、高い物は滅茶苦茶高い物まで幅広い製品が売られている。 そしてもちろん高い物の方がスペックは良い。 まぁ俺が実際にそれを購入出来るかは別問題だけどさ……


 ということで俺はスマホで“ゲーム用 パソコン 周辺機器 オススメ”で検索をかけて色々なオススメ製品を眺めていたという訳だ。 そしてそんな俺の様子が気になったようで、志摩もそれらの製品に興味が出てきたようだ。


「ねぇ、僕にもそれ見してもらっても良い?」

「んー? あぁ、いいよ。 ほらよ」

「ありがと。 へぇ、マウスだけでもこんなに種類があるんだね! どれどれ……」


 俺の見ていたスマホを志摩に渡すと、志摩は興味深そうに俺のスマホを眺め出した。


「へぇ、こっちのはプロ仕様のマウスかぁ……って高っ!? これ1.5万円もするの!?」

「あぁ、高いのはそれくらいするんだよ。 あ、流石に俺が使ってるのは2千円ちょいくらいのふつうのやつだからな」

「な、なるほど、本当にピンキリなんだね」


 志摩は驚いた様子だった。 俺も初めて見た時は高っ!? って思ったけどゲームをやり込んでる今となっては滅茶苦茶欲しい……!! って思いながらバイトを頑張る日々だよ。


「うーん、それにしてもマウスだけでこんなに種類があるなんてビックリだよ」

「あはは、俺も初めて調べた時ビックリしたな」

「あはは、だよねー。 でもこれだけ種類が多いとさ……どれを買えば良いかわからなくなんない?」

「そう、それなんだよっ! 種類が本当に多すぎるんだよなぁ……」


 ということで俺が悩んでいる一番の理由はそれだった。 多分誰しもが通る道だと思うんだけど、今の俺には一体どれを買えば良いのかわからない問題が発生していた。


 いやもちろん用途はゲーミング用なんだから、性能は高ければ高いだけ良いに決まってるんだけど、普通の高校生に出せるお金なんてたかが知れてるからな。


 一応高校生になった今はバイトもしてるから多少の額なら出せない事はないけど、それでもかなり高価な製品を買うなんて事は流石に出来ない。 ちゃんと価格とスペックを吟味しなければ……!


 ちなみに前回(2~3年前)に買った時は、某ネットショップでレビューが何となく良さそうなで安価な製品をポチっただけだ。 でもまた長期間使い続けるんだとしたら、今度はしっかりと色々な製品を見てから、自分に合った製品を購入した方が良いよなー。


(うーん、そこら辺が難しいんだよなぁ……あっ)


 そんな事を考えていたら、ふと一番仲の良いネトゲ仲間が頭に思い浮かんだ。 そういえばゴリさんってゲーム配信もしてたし、PC環境とか周辺機器とかにも詳しそうだよな。 今度通話する時にそういう話を聞いてみようかな? 購入する時の判断材料とか聞いておけば実際に買い物する時に役に立ちそうだし。


「ふぅん、なるほどねー。 あ、玄人君ありがとう、スマホ返すね」

「あいよ……って、うん?」


 志摩からスマホを受け取って電源をオフにしようとしたその時、ふとその画面に表示されている文章に目が留まった。


「……なになに? “PCショップ秋葉原店 新装セール開始!”……へぇ、何だか楽しそうだなぁ」


 それは先ほど俺が見ていたPCショップのサイトに掲載されているお知らせだった。


「ふぅん? そこは玄人君が良く行くお店なの?」

「いや、知らないお店だよ。 ってか俺アキバに行った事ないからな」

「あれ、そうなの? なんだか意外だね、ゲームとか好きなのにさ」

「あぁ、そうなんだよ。 いつか行ってみたいなーとは思ってるんだけどさ、中々行く機会が無くてな」


 俺も(一応)関東在住だしアキバにも興味はあるんだけど、今まで一度もアキバに行った事は無かった。 もちろんゲームは大好きだし、漫画とかのサブカルも大好きだから、いつかアキバに行ってみたいという願望は昔からあった。


 でも休みの日はバイトか家でゲームをする怠惰な日々を送っていたおかげで、今現在に至るまでアキバに行く事は一度も無かった。 あと単純に俺は埼玉在住で秋葉原に行くのって微妙に遠いんだよなぁ……だから一人で行くのが億劫だったってのも理由の一つだ。


(まぁでも……これもちょうどいい機会だし、近い内に行ってみようかな)


 PC周りの機器を購入していかないといけなくなったし、これを機に初めてのアキバ遠征でもしてみようかなと思いながら俺はスマホの電源を落とした。

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