第22話:お帰りなさい(完)
「一樹、うるさい。私は疲れているんだから、もう少し寝かせてちょうだい」
カーテンの向こうから聞こえる
「
うろたえる一樹に対し
「何いってるの? こんな仕掛けを考えているくらいなんだから、事前にもう1枚準備してあったに決まっているじゃない。なんなら予備も含めてあと4枚あったのよ。あのマット」
そう面倒くさそうに答える
「なら、なんで、あんな思わせぶりな言動をしたんだ。
「あぁ、あれは……。その、一樹が観測者になってしまっては量子テレポーテーションは成立しないし、ちょっと特殊な薬だったし……」
「俺は、
「いや、だって、ああした方がロマンティックだし、なんというか、私がああしたかったというか、4光年という距離で量子テレポーテーションが成功するとは思ってなかったというか、倫理的な問題があって、1度も実験で検証していなかったというか……。とにかく、今回は理論検証だけの技術による一発勝負だったの。だからあそこで死ぬ可能性の方が高かったし、あれが最後の賭けだったの。ごめんね、一樹」
「ちょっと待て、なんで
「いや、だって、やっぱり女は若くないと、一樹だって宇宙に旅立った時の私に会いたいかなぁと思って、
そんな
「一樹さん、覚えてる? 一樹さんと
「ちょ、ちょっと、
そう抗議する
「なぁ、
そう真面目に思い悩む一樹に対し、
「大丈夫よ、一樹さん。
「ちょっと、
「病室ではお静かに!」
急に病室内に響く子供の声。一樹と
桜花は、その瞳に意識を取り戻しベッドの上で上体を起こしている一樹を捉えると、一目散に走り寄り、ぎゅっと一樹に抱きついて大きな声でこう言うのであった。
「お帰りなさい、パパ」
と。
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