第03話:特殊相対性理論
「そう、それだよ、
一樹は不思議そうな顔を浮かべ、
「ねぇ、一樹。1光秒って意味、わかる?」
「光が1秒で進む距離のことだろ?」
一樹は
「そう、1光秒は光が1秒で進む距離、だいたい30万kmね。そして、ここからが大切なんだけど、1秒で光が進む距離が1光秒ではなくて、光が30万km進んだ時間が1秒なの」
「例えばね、30万km先に
「さて一樹くん、ここで問題です。この光時計が
唐突な
「そりゃ30万km以上進まなくてはいけないに決まっている。なぜなら
一樹のこの答えに
「その通り、大正解と言ってあげたいんだけど不正解なのよね。正確には31万km以上、光は進まなければならないんだけど……。でも説明がややこしくなるから、今回は31万kmということで説明するね」
そう答えた
「30万km先の
「でも、ここで考え方を変えて、光速は一定で、時間がゆっくり流れたと考えてみたらどうなると思う? 同じ1秒でも、時間がゆっくり流れた分だけ、光は余分に前に進めると思わない? 30万km以上、進めると思わない? そう、
「だから時間の長さは一定じゃないの。時間はね、光速によって定義される概念の1つにすぎない。そして愛の深さも、積み重ねた時間によって変わるものじゃない。光速と一緒で、一定で不変なものなの。そう考えると愛って、ほんとステキなものだと思わない?」
「でも俺は、これからもっともっと
そう一樹が
「なんで、一樹はそういうこというかなぁ。私は、ずっと一樹のことを愛しているのに。光速と同じで、これ以上深く愛することができないくらい愛しているのに。一樹はなんでまだ余力を残しているの?」
「いい一樹、あなたの大切な彼女がこんな恥ずかしいことを言っているんだから、こういう時は黙って
「そうだな、
一樹はそう言い返すと、
雄大な空のキャンバスを巨大な積乱雲がゆったりと泳ぐ、軌道エレベーターの安全を守るドローンの群れが、東から西へ悠然と通りすぎる。そして朝の澄んだ空気と陽の光が、
「ところで、
一樹は熱帯特有の高い空を見上げながら、ゆっくりとそう
「そうね。これから一樹は10日間、宇宙という空間だけではなく、地球と違う時間軸も旅することになると思う」
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