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アイドルではなくアルトサックスプレーヤーが僕の推しになったのか。

部屋に戻り残り少なくなった限定ウィスキーを飲んだ。

次のライブの予定はまだない。

それから毎日SNSを確認するようになった。

そのことをイチローさんに話した。

イチローさんは別に驚くことではないねと言った。


さきおにも話した。

今度聴きに行こうかなと言った。

行こうよと誘った。

来るかどうかは怪しい。

モルトにはウィスキーがそろそろなくなるからまた醸造所に行きたいと言った。

まだ醸造所は閉まったままだとモルトは言った。

このままではウィスキーがなくなってしまう。

モルトは同じ部署の同僚で一緒に醸造所に行ったことがある。

お互いウィスキー好きだ。


「最近咲丘さんのところに行ってるんだね。」と言った。

「誰から聞いた?」

「あこちゃんから。」

「そうか。」

「何か吹っ切れたのか。」

「彼氏が居るってわかってね、それがきっかけで。」

「彼氏が居るのか、まじか。」

「そんな感じまったくなかったけどね。そうだった。」

「だったらなぜ仲良くなったんだ?」

「自分でもわからない。急に話しやすくなったんだよ。」

「変わってるなあ。」

そうだろうか。そうかもしれない。


「彼女は出来たか?」

モルトは最近長年付き合っていた彼女と別れている。

「全然。そういう機会がないね。」

そうだ。コロナで出先に行くことはめっきり減ってしまった。

今の部署には先輩の女性はいるけど同期も後輩もいない。

こうなるとなかなか女性と出会う機会がないものだ。

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