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そんな折、僕の部署に新人女性が配属された。
独身男性の目の色が変わる出来事だ。
また青田みたいな真面目な子が来るのかと思ったら、ちょっと違った。
その青田がちょっとそわそわしだすぐらい美人だった。
教育係が自分になるのではないかと期待していたみたいだ。
教育係は僕になった。青田の教育係は卒業だ。
食堂で青田がこんなことを言った。
「私が教育係になると思っておりました。」
あきらかに残念そうに言うから笑ってしまった。
「まあそんなに残念がるな。」
「そうではありません。通常は1年先輩がなると聞いておりました。」
「通例は通例だよ。」
不満そうにコロッケを食べている。
新人女性は名波と言った。
「名波さんが美人だからそう言うんだろう。青田も正直だな。」
「それもそうではありません。」
と言っておきながら理由を言えないでいる。
こういう時の青田はわかりやすい。
でもなぜ僕が教育係になったんだろう。
課長の判断だろうか。
課長は僕がドルヲタなのを知っている。
というか部署全体が知っている。
だから安全だと判断したんだろうか。
ドルヲタだって告白することはあるんだぞ。
名波さんはどんな性格だろう。
仲良くなれるだろうか。
なんか青田が言っている。
「何?」
「名波さんは美人でしょうか。」
「え?美人かって?」
おかしなことを聞くやつだ。
「青田にとってはどうなんだ?美人には当てはまらないのか。」
「チャーミングだとは思います。」
青田の口からチャーミングなんて言葉が飛び出すから、
コロッケを吹き出しそうになった。
青田は面白いやつだ。
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