3

今日は久しぶりに大学の先輩の館山さんに会いに行った。

館山さんの彼女はジャズピアニストのゆうきさんだ。

ゆうきさんもライブがなくなり館山さんと居る時間が長くなったようだ。

今日も一緒に居た。

前に来た事があるので部屋の間取りとかはよく知っているけど、

ゆうきさんと付き合ってからは来たことがなかった。

だいぶ雰囲気が違った。

モノクロの渋い感じになっている。


「なんか館山さんの部屋じゃないみたい。」

「みおの趣味だよ。」

みおというのはゆうきさんの下の名前。

「ふたりのでしょ。」とゆうきさん。

「いい感じですね。」と僕。

最近のコロナ状況とかライブ事情とかも話した。

すこしづつだけどライブはしていると言う。

配信をすることも始めたという。

時間があるからいっぱい曲を作っているとも言った。


「いいですね。聴きたいです。」

「歌詞付きなのも書いたの。あさきちゃんに歌ってもらいたいと思って。」

「それは楽しみです。」

ミュージシャンもお店もみんな厳しい状況に置かれている。

いつになったら自由にライブが行われるようになるのだろう。


「卒業したんだろ。」

「はい。もうめっちゃへこんでました。」

「最後に会えなかったのか。」

「そうなんです。全部中止になって。だからなおさら落ち込みました。」

「延期すればよかったのに。」とゆうきさん。

「僕もそう思いましたけど、先行きわからないからそうもいかなかったんだと思います。」


ゆうきさんがコーヒーを淹れてくれた。

かぐわしい香りが部屋に漂った。

この部屋に合ってるなあ。


「あの子には彼氏が居たのか。」

「そうでした。」

「ちゃんと告ったのか。えらいじゃんか。」

「その日はなんかそんな気分でした。」

ゆうきさんがおかしそうに笑っている。


「まあ新しい子を見つけるんだな。どっちも。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る