四話

何で、自分スレスレの空気を殴られたのか。どうして、それで具合が少し良くなってしまうのか。全くわからないけれど一つだけ訂正しよう。


詐欺かも、……詐欺では無さそうだ。

効果ないかも………効果もありそうだ。

めちゃくちゃ怖いが!

霊的なものでなく、物理的なもので命の危機を感じるが‼︎

祓う。と宣言した高校生くらいの青年は、右手に数珠、左手に何かおふだのようなものを握りしめていた。

いや、拳にメリケンサックやナックルのように巻きつけている。と言えばいいのだろうか。

とりあえず、どちらも用途が激しく間違っているように見えて仕方がない。

「………わぁ。」

友人が間の抜けた声を上げた。

彼の目は点になっていたので、自分の感性は間違っていないようである。

「動いたら危ないですから、目をつぶっていただいても大丈夫でーす。」

すいません。怖い場合はどうしたらいいですか。あぁ、目をつぶればいいのか。

怖いの方向性が、想像していたものと540° ほど違うせいで、どうにもならない。

一周回っても処理しきれていないのだが?

しかし、そんな心情はそっちのけで青年は拳を構えた。

慌てて目をつむる。

開けていたら、条件反射で避けてしまいそうだった。

奇妙なお祓いは、その後七、八分ほど続いた。

時折風を切る音だけでなく、何かにぶつかる

ドコッ、バキッ、グシャッ。

そういう音も聞こえたが、清水はぐっと目をつむって、動かないよう耐えていた。

必死に。

そしてようやく、

「もういいですよ。お疲れ様です。」

そんな静かな声に、目を開けた。

肩は軽く、頭痛や耳鳴りもしない。随分と具合も良い。

青年はというと、ジッタバッタと動きまくるビニール袋にべしべしお札を貼り、清々しい笑顔を浮かべていた。

黒い色つきで、袋の中身はうかがえない。

それ、いったい何が入っているんです?

「大丈夫ですか?途中、ぶつかったりしませんでしたか?」

心配そうな顔だ。

「大丈夫、でした。」

うん、迫力と風圧しか食らっていないよ。

「よかった!いっぱい憑いてたので殴りおとしがいがありましたよ。」

「………ありがとうございます。」

何か言葉に違和感がしたが多分気のせいだ、……多分。

そう納得すると、清水は上着のポケットから財布を取り出した。

「えっと、お会計は……」

こんなに効果があるなら、まぁ……一万程度なら出してもいいかも。もしかしたら、もっと高いかな?

恐る恐る問いかけると青年は明るい笑顔で言った。

「はい、770円になります!」

「………え?」

彼はニコッと笑う。


「近くのファミレスで、パフェ一つ分が丁度それなんですよ!」

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