第3話 お茶会での失敗

「・・・・・・・」



 今俺は3年間疎遠になっていた婚約者と、仲裁者であるリアレンス嬢を交えてお茶会の最中だ。


 エリスタ・チェッカート侯爵令嬢、16歳。俺の可愛い可愛い婚約者だ。


「・・・・・・」


 だが、お茶会が始まってから一言も口を聞いてくれない。



「ね、ねえエリィ。今日はそーーーー」


「気安く愛称で呼ばないでくださいませ」



 あっ、あぁ!! 俺のバカ! 余計に機嫌を悪くしてしまったじゃないか! 


 うっ、まあそうだよね、3年間も蔑ろにしてた相手なんかに愛称で呼ばれたくなんてないよね・・・婚約者だけど。



「まあまあエリスタ様。シリウス殿にも事情があったわけですから、ちょっとくらいお話を聞いてあげてもよろしいんじゃないかしら?」


「・・・・リアレンス様がそう仰るなら」



 うっ! いやそうな顔が胸に刺さるっ! でもリアレンス嬢、サンキュー!



「で、お話とはなんですの? シリウス・カトラ侯爵令息様」



 うっ! 嫌味っぽく言われてしまった! エリィ、そんなに嫌なのかい? 俺と話すのは。



「あ、あぁ。ーーーーエリスタ。すまなかった!」



 俺はまず、いの一番に立ち上がって頭を下げた。急な俺の行動にエリスタが動揺する気配を頭上で感じる。




「え、えぇ。ですが頭を上げてくださらないと話ができませんわ。それにあなたにプライドはありませんの? 婚約者とはいえ、そんな簡単に頭を下げるなんて」



 あぁ、やっぱり優しいな、エリィは。高圧的なキツい言い方をしているが、これは俺を心配してくれていること間違いなしだ。



 訳:頭下げられるの申し訳ないから頭を上げて! それに貴族として簡単に頭を下げるのはなめられてしまうから良くないと思うのよ。他の人にも簡単に頭を下げてるんじゃないか心配だわ。



 エリィは今巷で言われている、いわゆるツンデレ、というものなのだろう。


 心の言葉とは反対の言葉が口から飛び出してしまうという・・・・


 まさにエリィじゃないか! 


 ツンデレは、その言葉から恋人や想い人とすれ違い、けれども最後には誤解を解いて結ばれるという物語さえあるらしい。


 まさに今の現状じゃないか!



 これだけ材料が揃ってるんだ、あとは誤解を解くだけだーー!



 可愛い可愛いエリィ、今誤解を解くから待っててね!




 エリィの言う通りに椅子に座り直す。エリィには誠心誠意今までのことを話さなければいけない。



「まずエリィは誤解してるんじゃないかと思うんだ。俺はエリィに構いたく「なっ、なんですの!? 急に3年も経ってから呼び出されたと思ったら私が誤解してるですって!? いい加減にしてくださいませっ!ーーーーリアレンス様。大変申し訳ないですが、もう帰らせていただきますわね。失礼します」



「え・・・・」


「あらまぁ・・・・いいのよ。落ち着いたらまた会いましょうね」



 え、え? 俺、何かしちゃった?



「なんでか分からないという顔ね。今のはあなたの言い方が悪かったわね。まあ次リベンジしましょう。頑張ってくださいませね」


 リアレンス嬢には何故か憐憫の籠った目で見られた。しかも頑張れとは? 今も現在進行形で頑張っているが?


 また失敗してしまった・・・・・


 俺、何やってんだろう。



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