第11話 ユニークスキル
先に動いたのはオークエンペラーだ。
巨大な鉈を構え。その巨体とは似つかない速さでこちらに向かってくる。
対する俺は、新しい刀でその攻撃を真っ向から受け止める。
(ちょ、重すぎだって!!)
パワーだけなら、俺が今まで戦ってきた魔物の中でも1、2を争うレベルだ。
むしろ、これだけの力を受けてもヒビ一つ入らない刀に俺が驚いているまである。
腰を深く落とし、身体強化の魔力を体中にガン流しにしてなんとか受け止めきった。
「!?」
オークエンペラーは驚きを隠せない様子。まさか受け止めれるだなんて思ってもいなかっただろうな。
ここで一撃を受け止めることによって、「次も受け止められるかもしれない」という思考をオークエンペラーに刷り込むことができる。
魔物は知能だけなら動物と大差ないので、結構こういう勘違いをしてくれることがあったりする。
その後も剣戟?を続けていく。
ちなみに、俺の刀術は誰かに教わったものではなく、迷宮の魔物を真似ているうちに身につけたものだ。
そのため、俺の刀術は殺すことに特化している。対人戦で打ち合うのが苦手なのもこのことが理由だろう。
色んな魔物と戦っているうちに、実は刀以外もそこそこ使えるようになった。
だからこそわかる。
(コイツ、戦いのセンスは大したことないな)
確かにパワーと魔力量は人知を超えているし、スピードも並以上にある。
だが、コイツには技がない。
魔王の影響で最近誕生したばかりだからなのか知らんが、戦闘の技術だけならCランクの魔物と大差ないな。
攻撃が単調なので、受け流すのは簡単だ。頭おかしい力のせいで魔力がどんどん持っていかれるが。これで技があったら本当にヤバかったな。
先程回復した魔力がもうそろそろ20%を割りそうだ。
地属性魔法と水属性魔法の氷魔法でオークエンペラーの足元を固定し、一度距離をとる。
オークエンペラーはすぐに抜け出すが……問題ない。ただの時間稼ぎだからな。
魔石を握り、魔力を回復する。
魔石に内容できる魔力の容量は、ドロップした魔物の強さで決まる。
そのことから、Sランクの魔石やAランクの魔石といった呼ばれ方をすることもある。
なので、魔石で魔力を全回復できる回数は普通1回、よくて2回だ。
だが、俺にはユニークスキル【融合】がある。
俺の魔石は……俺が今まで倒してきた数千体の魔物の魔石を融合して作った魔石だ。
そのため、魔石の容量の限界はほぼないと言っていい。
ここ一年ほど毎日、使わなかった魔力を寝る前に魔石につぎ込んできた。
そのため、魔石内の魔力は相当なストックがある。
……ちなみに、寝る前に魔力を使い切ると程よい疲労感を得ることができ、寝つきが良くなるという副効果もあった。正に一石二鳥である。
それにしても、一々魔石を取り出すのが面倒くさいな。
「変形」
ビー玉ほどの魔石を変形して小さな指輪にして指にはめる。
うん、これでいつでも魔力を補給できるな。もっと早くこうしとけば良かった。
ふとクラスメイト達の方が気になり目を向けてみると、どうやらオークキング3体はもう倒せたみたいだ。クラスメイト達もこちらの戦いを見ている。
……なんかこんなに見られるとちょっと緊張するな。
再びオークエンペラーと打ち合いを始める。
……さっきとは違い、本気で殺しに行くが。
何度か打ち合ったのち、不意にオークエンペラーの鉈を受け流す。
オークエンペラーは予想外の受け流しにバランスを崩すが、すぐさま立て直す。
――だが、もう遅い。
俺の刀は真っすぐにオークエンペラーの首に向かう。
とはいえ、首もしっかりと頑丈な鎧に纏われているので、このまま一撃を入れても大してダメージは入らない。
と、オークエンペラーは思っただろうな。
「変形」
刀が首に命中する直前にユニークスキル【融合】の能力の一つ、変形でオークエンペラーの首元を開く。
「グオオォォォ!!」
「うおっ……!!」
俺の一撃はオークエンペラーに首に命中し、オークエンペラーは吹っ飛んでいく。
えぇ、こんな魔力使うの?
俺がこじ開けたのは首元だけだったのだが……先ほど魔力は満タンまで回復させたはずだが、今は残り一割ほど。
マジであの金属の正体が気になるな。
魔物の身に着けてるものって、魔物を倒すと一緒に霧散しちゃうんだよな。
俺の知り合いにこういうのを解析できる奴はいるんだが、尚早と今ここにはいない。
「「「うおおおお!!!」」」
俺がオークエンペラーを吹っ飛ばしたことで、クラスメイト達から歓声が上がる。
いや、君ら俺の事無視してたよね?特に男子。手のひらクルクルが過ぎると思うんだ。うん。
というか、まだ倒せてないぞ。
迷宮の壁に激突したオークエンペラーが、ゆっくりと起き上がる。
吹っ飛んだってことは首を撥ねれていないってことだからな。やはり斬れ味には難ありか。
オークエンペラーの大木のような首には大きな切り傷が出来ていて、ドバドバと血が流れている。
首元の鎧は開いたままなので、鎧に自動修復機能はないようだ。もしあったら正直詰んでいたので良かった良かった。
とはいえ、肉体の自己再生機能はあるかもしれないので、どんどん追撃を入れることにする。
「『
2つの魔法を同時に起動する。
そして更に……
「【融合】」
ユニークスキルで魔法同士を融合する。本来混ざり合いえない2つの魔法が、ユニークスキル【融合】によって完璧に混ざり合う。
「融合魔法――『
聖なる気を含む大波がオークエンペラーの巨体を飲み込む。
特殊個体を除けば、魔物に対して相性が良い光属性魔法と、傷口に染みるであほう水属性魔法の融合魔法。
「グオオォォォォッ!!!」
それは殺傷力こそ低いものの、オークエンペラーに甚大な苦痛を与える。顔と首元は開いたままだからね。
ちなみに、名前はその場で結構適当に決めているので、使う度に名前が変わっていたりする。そろそろちゃんと名前を固定したいな。
そして、融合魔法の副効果として――魔法を自由に変形できる。
俺はオークエンペラーを閉じ込めるように波を操作する。
更に、聖水をグルグルと回転させれば、擬似竜巻の完成。
オークエンペラーの苦しむ声が部屋中に響き渡る。
……なんかコレ、ちょっと拷問みたいだな。
現状、オークエンペラーに聖水の牢獄を突破する手段は無い。
大鉈で切り刻んでも聖水自体が消滅することは無いので、変形ですぐに元に戻る。まさに無限牢獄。
そもそも、痛みと苦しみのせいで思うように行動出来ていないっぽいし。
オークエンペラーの声が聞こえなくなった所で、聖水を解放する。
ダメージはまだ足りず、オークエンペラーは生きているみたいだが、もう心が折れかけている。
「やっぱ、生まれたてなだけあってメンタルは弱いよなぁ」
ま、分かっててやったんだけど。
肉体的に殺せないのなら、精神的に殺せばいい。魔物とて、頭は弱いが感情はあるからな。
「ま、安心しろよ。すぐに楽にしてやるから。『聖氷斬』」
流石に、敵意の無い相手を虐めるような趣味は俺には無い。
魔法で生み出した刃でオークエンペラーの首を撥ねる。やっぱ、魔法の方が切れ味がいいな。最初からこうしとけば良かった。
オークエンペラー頭を切断されたことで地面に倒れ伏し、静かに霧散した。
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ここまで読んで戴きありがとうございました。
今回で、クラスメイトとの迷宮攻略は終了になります。
面白いと思った方、ユニークスキル【融合】が使えたらなぁと思った方は是非、☆評価、フォローをお願いします。
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