第36話 短期決戦
ジェネラル二体が視界に入っている。
しかし、俺たちは攻撃する事なく、隙を気を伺っていた。
殺意も殺し、内から漏れ出そうになる魔力も呼吸すらも抑えて待つ。
立てられた作戦は一言で言うなら短期決戦。
一気に奇襲で攻めきる。
二体に動きはないが問題は取り巻き。
取り巻きの数は刻一刻と変化し続ける。
周りの気配からできるだけ数を割り出し、攻め切れるであろう数になるまで待った。
二十……十五……二十一。
十六……十二……。
目標とする数は八。
なった瞬間にドッグがアーチャーに向けて、攻撃、残りの八体を瞬時にラルカが拘束し、アーチャーを仕留めきれれば四人でナイト。
失敗の場合は俺とダラスの二人でナイトを抑える手筈。
……九……十三。
ピクッと全身がそれを知覚した。
そして、ドッグとラルカが隠れているポイントから一気に魔力が放出される。
これまで、抑えてきた魔力を一気に最大値まで持っていかなければならない。
しかし、魔力も身体機能の一つ。
なんの準備運動もなく、一気に最大値まで上げるのは至難の業。
『敵味方関係なく視界を遮る、攻撃はダメだ。一点集中型の攻撃が望ましい。
最大の火力を最小に圧縮する、高度な魔法を頼みたいができるか?』
『まだ、会って一時間。
信頼できないだろうが大丈夫。
俺なら……やれる!!』
両手に灯された爆峰の融合。
それを指先に圧縮する火弾との併用魔法。
本来、オレンジ色に輝く炎が白く染まる。
ドッグが放つ極大火力の最小魔法。
“
音のない、白い一閃。
それと同時にラルカの魔力の矢が同時に八本取り巻きの気配が感じられる場所に飛翔する。
同時刻にダラスと俺は魔力を最大限まで引き上げ、全ての魔力で身体能力で上げる。
白い光がアーチャーを射抜く。
しかし、それは仕留めきれずにアーチャーの左半身を削ぎ取り、地面に着弾した。
ドッグの魔力が揺れるのを感じた。
悔しさから来る動揺。
確かに、シャドウ種ならあの傷も治してしまうだろう。
しかし、それでも完治まで時間はかかる。
結果は上場。
これで仕留めきれなきゃ赤っ恥だろ!
俺はナイトに向かって、地面を蹴った。
同時にダラスも魔獣化し、ナイトに向かって飛び上がる。
ドッグの攻撃に気は引けていたがジェネラルナイトは瞬時に俺たちに気づいた。
頼むぞ、ダラス。
「ウオオオオオオオ!!!」
咆哮を上げ、ジェネラルナイトの両腕の装備を破壊しようと凄まじい衝撃を発生させる一撃が放たれた。
パラパラと音を立てて、ジェネラルナイトの装甲が剥がれ落ちていく。
防御の上からにも関わらず、確実に与えたダメージ。
両手に握るナイフを力強く握り直す。
視覚で捉えた僅かに見える魔石の輝きに向けて、ノアと毒牙で横薙ぎに振るった。
「……ッ!?」
しかし、ナイトジェネラルはギリギリのところで実体化を解き、魔石の位置がズレる。
二本のナイフは虚しく空を切った。
今の実体化から影化の速度はアサシン並。
コイツ、ナイトタイプじゃないのか!?
「まだ!!」
地面に近づいく魔石に向け、ダラスが盾で押し潰そうと地面に叩きつける。
しかし、地面からナイトジェネラルの盾が出現し、それを受け止めた。
「クソッ!」
仕留め損なった。
しかし、それを気に留めている時間はない。
思考を次に移し、状況からより適切で有利になる行動を頭の中で導き出す。
ナイトジェネラルをこの状況で倒し切るのは無理。
狙うなら再生が終わってないアーチャージェネラル。
でも、単純な急所狙いの攻撃じゃあさっきみたいに避けられてしまう。
“欲しいのはこれだろ!!”
ナイフに向けて放たれたであろう、爆峰を視界の隅で捉える。
完璧なタイミングと完全に思考がリンクしたと感じる程の何か。
「最高!」
……エンチャント。
爆峰を纏った爆発力のあるこの一撃ならギリギリで解いても爆発で魔石は粉々だ。
ナイトジェネラルはダラスに任せても大丈夫。
「ぉおお!」
アーチャージェネラルの再生が終わるギリギリのタイミング。
もう一手欲しいところでラルカの弓矢が飛来し、瞬時に形を変えて鎖でアーチャージェネラルを縛り上げる。
完全に動きを封じ、抜け出すには実体化を一時でも解かなければいけない状態に追い込む。
しかし、今解けば無防備な状態でこの一撃を喰らうことになる。
とった!
視界に爆炎が広がり、魔石が砕けた音とアーチャージェネラルが炎に解けていく瞬間を捉え、息つく暇なく地面を蹴った。
爆峰をエンチャントした状態なら確実に魔石を破壊できる事は証明された。
この勢いのまま押し切る。
勝気は完全にこっちに向いている。
感覚、冒険者の戦場で働く直感。
ここを逃せば逆風でやられるような胸騒ぎ。
進化したてアーチャージェネラルはともかく、いつから存在しているかわからないナイトジェネラルの力は未知数。
明らかに早い実体化と影化の間。
それをこの場の全員が感じてか、全員の攻撃感覚が切り替わるのがわかった。
俺より先にラルカの弓矢とドッグの火弾がナイトジェネラルに飛翔する。
しかし、それを両脇から出現した二体のシャドウ種が身を挺して守り消滅した。
統率の取り方、戦術を思わせる目の前のモンスターに驚きを隠せない。
まるで、人間と戦っているような気分。
シャドウ種の魔力の中に僅かに人間の魔力が混じっているような錯覚すら覚えた。
「ふっ!!」
背後からの一閃。
魔獣化したダラスに精一杯かと思ったが瞬時にダラスを盾で吹き飛ばし、その勢いで振り抜いた盾に俺も吹き飛ばされた。
「はぁはぁ……」
周りから他のモンスターの気配が近づいて来ている。もう、時間はない。
「次で決める!」
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