第37話 ジェネラル
時間はない。
現状、決め手になるのは一撃は爆峰。それ以外の攻撃じゃ魔石を破壊できない。
爆峰をそのまま当てるかエンチャントしたナイフで直接当てに行くしかない。
なら、当てるにはラルカの魔法の拘束が必要だろうが簡単に拘束はさせてくれない。
俺とダラスでの足止めは絶対。
クソ、時間がないのに決め手にする為のやる事が多すぎる。
「ウオオオオオオオオオオオ!!!」
ダラスが咆哮を上げて、ジェネラルナイトに向かっていく。
ジェネラルナイトはダラスの攻撃は確実に剣か盾で防がなければならない。
鎧ではあの威力には耐えらず破壊されるから。
「ふっ!!」
爆峰が僅かに残った一撃がジェネラルナイトの脇腹の鎧を砕く。
ジェネラルナイトはダラスに集中力の大部分を使わなくてはならない。
そこに勝気は確実にある。
「ウオオオ……Oooooo!!!」
ジェネラルナイトの体制がよろめく。
その瞬間を逃さず、ダラスが目にも止まらない連撃を浴びせて、激しく火花が散る。
ダラスから緑色の魔力が迸り始め、攻撃の激しさが増す一方で繊細さを欠いた荒々しい猛攻。その一撃一撃がジェネラルナイトの剣と盾を砕いていく。
そして、ジェネラルナイトの姿が明滅し始めた。
流れがこちらに傾いた。
決めるならこの瞬間以外はない。
ラルカの弓矢が頭上から降り注ぎ、ジェネラルナイト片脚を地面に縛る。
しかし、爆峰で決めたいがダラスとジェネラルナイトの距離が近い、巻き添えになってしまう。
避けられる可能性はあるが背後から魔石を狙った刺突。
俺はジェネラルナイトの背後に回り込み、魔石があるだろう一点に集中力を傾けた。
……チリッ。
時間をかけ過ぎた。
熱を感じ取った方向に視野を向けると視界一杯に広がる炎弾。
ジェネラルナイトは剣と盾をしまい、全魔力をその熱に耐える為の鎧に作り変える。
その硬度はダラスの一撃も弾き返した。
このままでは俺とダラスだけやられる……。
「わけあるかよ」
お前ら、詰んでだよ。
今のダラスは弓矢じゃ止まらない。
ナイトやアサシンじゃ援護に間に合わない。
だから、この魔法による一撃。
だが、魔法は俺には効かない。
「返すぜ」
炎弾を来た方向に放ち返す。
援護に来ていた、シャドウ種達が次々に消えていく。
だか、この瞬間に魔石に爆峰を直接当てる役割の人材が消える。
好機と見て、ジェネラルナイトは剣を持ちダラスに剣を振りかざす。
それと同時に爆発音が響いた。
自らの手から放つ炎を推進力で一瞬でドッグは懐に入り込んだ。
「伯!!」
ゼロ距離からの魔石を狙った白い閃光がナイトジェネラルを射抜く。
「Yaット……倒したか」
地面に砕けた魔石が落ち、ジェネラルナイトが倒れたことを確信し、ダラスも魔獣化を解いた。
近くにモンスターの気配もない。
緊張の糸を緩め、二人の元に歩く。
「やったね、みんな」
ラルカが俺たちに向かって走ってきた。
手にはシャドウ種達の魔石が入った袋。
俺たちをサポートしてる傍でかなりのモンスターを倒していたのがわかる。
その中でもここ一番の時にあの的確な拘束は相当なものだ。
「悪いな、持ち場離れちまって」
「いいよ。ドッグが行かなかったら、最後危なかったし。
それに、こっちの残りは少なかったしね」
「本当にな。いいタイミングで来たな。
アレは狙って、最後のトドメをとりに来たのか?」
「意地悪な質問すんなよ。
最後の一瞬はシンが持ち場を離れるしかなかった。なら、あの場で奴にトドメをさせるのが俺だけだった気がしただけだ」
「悪い。冗談だよ。
それと、シン。おまえのおかげで助かった。
ありがとな」
「おう」
最後の炎は防がなければ俺も死んでいた。
別に感謝するほどのことでもないだろうに。
「今日はこの金でなんか美味しいもんが買えるといいな」
ふと溢れたそんな言葉に全員が息を漏らした。
「おまえがそんな事言うなんてな」
「疲れたんだ。なら、腹も減る。
ネル達には悪いが追加で二人分頼まないといけないけどな」
「ネル?」
そう問い返されて、二人にネル達、メイデン一家のことを伝えていない事を思い出した。
「冒険者にもなれない歳の子供だ。
両親が死んで、そいつらの生活を支える資金を提供する代わりに飯と作ってもらってる」
「へー、そんな事してるんだ。
別に両親が死んだ餓死する子供達なんて珍しくもないのになんで?」
「ちょっとした縁でな」
不思議そうに見られるがそれも仕方ない。
他人の子供を育てるなんてなんのメリットもないから。
身の回りのお世話を条件なんてこじ付けもいいところ。
「まあ、飯は美味い。
アイツらなら追加で二人でもやってくれると思うから良ければ一緒にどうだ?」
ダラスとラルカは顔を見合わせると二人は頷いた。
「邪魔にならないなら」
「同じパーティだろ」
激戦を一緒に潜り抜けた奴を邪険にするわけがない。
それにアイツらもダラスの魔法を見ても驚きはするだろうが怯えたりはしないだろう。
「なら、早く帰ろう。
ここで、長くいては危険だしな。
みんなもう、動けるか?」
「ああ、大丈夫だ」
俺たちは疲れた足取りでその場を離れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます