第17話 素材の受け取り

 ダンジョンから街に俺たちは無事に帰ることができた。

 無事に帰ることができても間近で見られたアルガリアの背中を忘れられずにいた。

 そして、その感情を秘めたまま、窓口に向かった。

 

 「大きい物だ」


 そう言うといつもは台しか出入りしない部分が大きく開かれる。

 仮面を被った神と対面する数少ない機会。


 「……へ?」


 神からそんな素っ頓狂な声が聞こえ来たが無視して次々に今回ダンジョンで手に入れた物を全て台の上に載せ神に渡すと再びいつもの窓口に戻って行った。


 そして、しばらく待つと台と一緒にお金とそれに紙が送られてきた。

 一目で神、ソラナ・ギフトからのメッセージだとわかり、財布の中にお金と一緒に入れる。

 ここで話せば良いのにと思うが手紙ということはここでは話せない理由があるのだろう。

 それに、俺達も優遇されるかもしれない事を他の人たちに知られては面倒なことになりかねないから好都合だ。


 足早に白宮神殿から離れて、手紙を開く。


 “また、同時刻に同じ場所にいらしてください。今回の素材をお渡しします。

 ですが大変申し訳ないのですがお返した素材分のお金を返していただく事になりますのでどうかよろしくお願いします。”


 「なんて?」


 「同時刻に同じ場所集合。

 その際にそのお金も持ってきてだと」


 「了解。で、何貰う」


 「サマエルの牙」


 「それと鱗もだ。

 防具を使った方がいい。

 それと服も買い替えないとな。

 お前に関してはほとんど半裸だ」


 自分の服を見れば胴に撒いてある布一枚。

 確かにこれは買い直したほうがいい。


 「鱗を防具に加工できるのか?」


 「八年も鍛治士やってればモンスターの素材を武器防具に加工するなんて何回もやってるよ。俺の腕を舐めんな」


 「すまん。じゃあ、頼む」


 「任された。

 代わりに素材の受け取り頼めるか?

 加工に準備がいる。

 いくらか金も使うから」


 「了解」


 「じゃあ、俺は師匠の工房に行くわ。

 加工用道具買ってくるから、また後でな」


 そう言って、ドッグは走っていく。


 了解はしたが神と一対一で対面か……。

 神の目の光量的にも時間は後少し。


 「きゃ!?」


 狭い道から一人の女の子が飛び出してきて、俺にぶつかり、地面に魔石が散らばる。

 

 「大丈夫か?」


 「……は、はい、大丈夫です」


 見た目は幼く見えるが驚いた事に腕に冒険者である証、神刻があった。

 転んだ際に地面に散らばった魔石もそれで納得いった。

 だが、魔石を持ってなんでこんなところを走っているんだという疑問が浮かんだ。

 

 「落としたぞ」


 「ありがとうございます。失礼します」


 そう言い、女の子は足早に白宮神殿の元に向かって行った。

 疑問が残るが後を追っても仕方ない。

 俺も服を買うために一度白宮神殿に一度戻り、五十リンで服を購入して、そのまま着て、時間が来るまで家で待った。


 そして、時間が来て待ち合わせ場所に行くとソラナ・ギフトが待っていた。


 「こんばんは。

 では、今日も前の場所まで」


 「わかりました」


 そう言われ、白宮神殿に足を踏み入れた。


 「もう一人の方は?」


 「今日は用事です」


 「そうですか」


 部屋に入ると今回、納品したモンスター達の素材が並べられていた。


 「サマエルの牙と鱗をもらいます」


 「わかりました。

 返金額は一リンですね」


 ソラナ・ギフトに一リン渡して、一応素材の確認をした。

 疑っていたがしっかりと本物の素材。

 それをバッグの中に入れる。


 「それ以外は納めてくれて大丈夫です」


 「わかりました。

 それにしても驚きました。

 装備を変えただけで十階層踏破するなんて」


 「ご期待に添えて良かったです」


 「はい! これからもこの調子でよろしくお願いいたします」


 「……はい」


 「えーと……あ、それと私、明日は白宮神殿にいないので手に入れた素材が……」


 「わかりました。大丈夫です」


 「そうですか。

 私は毎週同じ曜日に休みなのでよろしくお願いします」


 「はい」


 「えーと、では、今日もお疲れ様です。

 ゆっくり休んでください」

 

 「わかりました。では、これで」


 そう言って、白宮神殿を後にし、帰路に着くとドッグが荷物を持って待っていた。


 「よ!」

 

 「おまえ、やっぱり間に合っただろ」


 「冗談を言うな。

 今まで師匠にいい道具を安値で買わせてもらうように交渉してたんだよ」


 「師匠に値引きなんて良い度胸だな」


 「師匠におんなじ事言われた」


 「それで、結果は?」


 「俺の粘り勝ちだ。

 十リンも値引いてもらったよ」


 「さすがだな」


 「それで、そっちはどうだった?」


 「なにも。素材と金を交換して終わりだ」


 「偽物と変えられてたりは?」


 「確認したがなかった。

 納品物そのまま渡してきたよ」


 ドッグは一応と言わんばかりにバッグから鱗を取り出して執拗に確認した。


 「本物だな。

 鱗は胸当てするとして牙はどうする?」


 「武器にだよな」


 「でかい牙だからな。

 ナイフ以外にも片手剣アーミングソードくらいなら作れる」


 「リーチは確かに欲しいな」


 ナイフの間合いの狭さは戦闘時苦しくもあるが狭い通路でも問題なく戦える利点がある。

 

 「でも、先にドッグ。

 自分のナイフを使ったらどうだ?」


 「俺? まあ、確かにキチィな。

 じゃあ、ナイフ二本作っとくよ。

 もう一本あれば投げられるしな。

 遠距離も攻撃できた方が助かるだろ」


 「ああ、結構助かる」


 「じゃあ、それで決まりだな。

 また、一日休暇もらうぞ」


 「おう、頼んだ」

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