第2話 努力は報われない4/5

「はー、今度は絵里ちゃん、sixチームになんのね」

 貴女、ずっと体育座りだけど、いい加減疲れないの?

「10チーム中の6かあ。まっ、あの子なら大丈夫でしょ。ね?」

 というか、いくら冷房をつけているとはいえ、長袖って暑くないの?

「涼ちゃん?」

「あっ、ごめんなさい。なにかしら」

 全く話を聞いていなかった。


「絵里ちゃんなら大丈夫だよね、って」

「まあ……そうね」

 那海は私の方にカラダを向けて、足を崩した。やっぱりあの体勢疲れたのね。

「Magentaでグループ活動してるときは華がないんだけどさ、1人のアイドルとしては華もポテンシャルも兼ね備えてるもん。審査員にはボロクソ言われてたけど」


「そう、そうなのよっ」

 あっ。今まで塩対応していたのに、思わぬ賛辞さんじにカラダを前のめりにして反応してしまった。

 仕方ないじゃない。基本的に私は感想を呟いたり人と共有しないオタクだから。コミュ障ぼっちオタクなんだから。


 幼馴染がアイドルに理解がある人だとわかってしまったら、

「何故かグループの一員になると華が消えるのよ。本当に、なんでなのかしら。ライブがつまらないわけじゃない。パフォーマンスが悪いわけじゃない。個人では活躍しているのに」

「うんうん」

 言葉が止まらない。

「だから、彼女たちが既にデビューしているにもかかわらず、オーディションに参加した気持ち、わかるのよ。賛否両論だけれど」

「複雑だよねえ」


 そうなのよ。ファンは滅茶苦茶複雑なのよ。

 FC会員数ワースト1位、2位を競っているMagentaとFoUrth。去年デビューした後輩デュオ『2ndセカンド』は既に50万人にを突破しているというのに、2グループは10万人なんて遠い世界。

 どっちが多いのかと問われたら、FoUrthが約1万人多い。

 ちなみに、会員数100万人を突破しているグルがいくつもあるNumbersの中で、7、8万人で停滞しているのは彼女たちだけ。


 だから、「このままじゃいけない」「グループのために」「なにをやっても売れなのなら、オーディションに全てをかけるしかない」と言った少女たちの気持ちを、覚悟を無駄にはさせない。


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