第2話 努力は報われない5

「次の投票までに、もっと絵里ちゃんの魅力を世間に発信しないと」

 自分に言い聞かせるように小さく言ったはずの言葉は、

「やる気マンマンだねえ。もしかして、フォロワー結構多い感じ?」

「……」

 那海の耳にしっかり届いていた。

 そんなに無邪気に、目をキラキラさせて聞かないでほしい。

「ありゃ、聞かない方が良かった?」

 私、勘のいいガキは嫌いよ。


 おっと。口が悪くなってしまった。


「別に。この間まで鍵垢だったからフォロワーが少ないだけよ」

「そっかそっかー」

 生温かい目をやめてもらっていいかしら。凄く腹が立つわ。


 那海から視線を逸らして、TVの電源を消す。

 大丈夫、もうエンディングが終わってCMが流れていたから。消しても問題なしよ。


「でもさ」

 相変わらず私の目を真っすぐ見て、

「推しのために頑張る涼ちゃん、好きだよ。影響力なんてないかもしれない。無駄かもしれない。それでも頑張るんでしょ。ファンって凄いね」


 さらっと言われた『好き』に心がざわついたのは何故だろう。

 きっと気のせいね。他人から褒められるなんて、大人になってからはほとんどないもの。

 褒められて、ちょっと気持ちが浮ついただけ。

 本当に、ただそれだけ。


「とっ、ところで貴女、いつまで一緒にいるつもりなの」

 声が上ずったのは、照れたからでも、

「私、明日も仕事だから早く帰ってほしいのだけれど」

 動揺したからでもないのよ。

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