第1章 幼馴染との再会
第1話 ついてきた1/3
どうしてこうなったのかしら。
まず、状況を整理しましょう。
私はガードレールの上に立っていた不審者を助けた。そしたら、その人は幼馴染でした。
終わり。
それ以上でも、それ以下でもないのだけれど。
いえ、付け加えなきゃいけない情報があるわね。
彼女を家に連れて帰ってしまった理由。
それは、勝手についてきたから。
彼女が幼馴染であることを認識した後、私はそそくさと逃げ出したのだ。那海と相対することは、割とメンタルにくるのよ。
なのに、マンションまで帰って玄関のカギ穴に鍵を差し込んだとき、ふと視線を感じて後ろを振り返ったら、
「ごめん、ついてきちゃった」
夜だというのに、太陽みたく明るい笑顔で言われた。
「いやいやいやいや……どうして」
「うーん。だって久しぶりに再会したんだよ。何十年ぶりだよ? もっと話をしたいのにさ、涼ちゃんったら逃げ出しちゃうんだもん」
頬を膨らませながら言った彼女が、幼い頃の那海の姿と重なる。
「そりゃだって……」
真っすぐに見つめてくる視線から逃れるように、
私は、私には、那海を直視する資格なんてない。
「貴女の左目の視力を奪ったの、覚えているでしょ」
失明には至らなかったものの、著しく視力が低下してしまった彼女の左目。
何故そうなったのか。なにがあったのか。
全ての原因は、私――
あれはたしか、私が10歳で、那海は4歳だった。
家が隣同士だった私たちは、休みの日はほぼ絶対と言っていいほど、一緒に遊んでいた。
そんなある日、私は取り返しのつかないことをしてしまったのだ。
彼女に合わせて積み木で遊んでいたら、積み上げるのではなく、いつの間にか投げ合う遊びになっていた。
本来なら年上で、ある程度『やっていいこと』と『やってはいけないこと』の分別がついていた私が、那海を
それなのに、私も一緒に積み木を投げてしまった。
あんな角が尖ったものを投げたらどうなるか、少し考えればわかるのに。
だけど当時の私は未熟だった。そのことが悲劇を招いた。
私が投げた積み木が那海の左目に直撃してしまったのだ。
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い」
そう泣き叫ぶ彼女。親たちが駆け寄ってきたこと。救急車が呼ばれたこと。
その日の記憶はそこで途切れているけれど、後日、私は両親と共に彼女の自宅へ謝罪に行ったことは覚えている。
今でも夢に見るくらいに。
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