幕間 その6 勇者特権

勇者となった者には三つの特権が与えられる。


”勇者の特権

 絶対不可侵 あらゆる国は、勇者を裁くことは出来ない。

 移動の自由 如何なる者も、勇者の移動を制限できない。

 特権の授与 勇者は、第三者に勇者の特権を授与できる。”


 この三つの特権は、勇者という存在が生まれ、数々の功績を残してきた歴史的経緯から根付いた一種の慣習法である。といっても、この特権は無制限に行使できるわけもなく、行き過ぎた行為は認められない。勇者の任命権は、それぞれの国家による推薦を受け、宗教都市キンプーサを総本山とする勇者教団に委ねられる。しかし、勇者の身分は教団や特定国の代表ではなく、人類全体の守護者である。ルガーツホテルで行われたヒナの勇者就任パーティーは、ブラッドによるヒナへの特権の授与記念式にあたる。その後、アイリスケリュケイオンの発見によって、ヒナは正式に勇者に任命されることとなった。

 そして、勇者は任命される際に、一つの誓約を求められる。


”勇者の誓約 勇者は、その力を人間に向けてはならない。”


 各国家はこの特権と誓約によって、勇者と友好的な関係を保ち、平安を保っている。だがしかし、強力な魔子を持った者は、勇者でなくとも脅威となり得る。この世界のこの事実は、人類に敵対する勇者となり得る者が現れた際の危険性を示している。そして、その様な事態になれば、双方ともに多大なる犠牲を払うことになるが、今現在そうなっていないのは、魔王という人類共通の敵の存在と、何よりも勇者個人の意思によるところが大きい。

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