幕間 その5 出演交渉
オレンがトイレの中で、羞恥に顔を染めている時、丁度ミーヤが帰ってきた。
「たっだいまー。」 「あら、おかえりー。」
何事もないかのようにルーナは笑顔で、手と耳を振る。ミーヤはそれを見て、開けた玄関をそっと閉じた。
「……。あっれー? ここ、私の家だよね…。」
家の前で軽く錯乱するミーヤはそう呟いて、今度はそっと、ドアを開けてみる。薄く開いたドアの先で、ルーナは変わらず笑顔で手を振っている。
「なんでっ!! なんで! 勇者ルーナが家にいるの?!」 家が揺れるほど、ミーヤの大声が響く。
「ナハハハ…。」 ルーナは状況を楽しんでるように笑っている。そこに、
「~~~~。」 すごく居心地が悪い様子で、ソローリとトイレからオレンが出てきた。
「なっ!!! ちょっと、二人して何やってたのっ!!!」 家が壊れるほど、ミーヤの感情が爆発した。
ーなんやかんやがあってー
「なーんだ。びっくりしたー。もー、心配しちゃったじゃなーい。」
オレン決死の状況説明の結果、誤解はすぐ解けた。相変わらずルーナはその様子を面白がっているようだったが、今は三人で食卓を囲んでいる。
「ねぇ。もう、少年も若気の至りって奴? だから、ミーヤちゃんも許してあげて。」
(え? 俺が悪いの?!) ルーナの言葉にオレンの心中は穏やかでない。
そんなオレンを知ってか知らずか、ミーヤはルーナに一つお願いをする。
「あのー、ルーナさん。兄の迷惑ついでに、一つお願いがあるんですけど…。」
(え? 俺なんか迷惑かけた?!) ミーヤの言葉にオレンの心中は穏やかでない。
「なーに?」
「私、学校の友達とカカマジっていうマジオ放送の活動やってるんですけど。今日もこれから放送するんですよね。あの、だから良かったらちょっとだけでも、出てもらえないかなーって…。」
ミーヤのお願いは下手には出てはいるが、多分に一線を越えた失礼が含まれる。それを聞いてオレンは思う。
(いやいや。それは…。ミーヤさん?)
そんなオレンを知ってか知らずか、ルーナの返答は意外なものだった。
「なんだか素敵ね。うん、良いわよ。おもしろそう。」
そう言って、チラリと俯いているオレンを見るルーナの耳は振られていない。
「ホントですか?! ヤッター!! 今日は神回確定よ!」 ミーヤはガッツポーズを決める。
「早速、打合せしましょう!」 何のためらいもなくルーナの手を取る。
「あのね、リンカとサンセっていう友達と一緒にやってるんですけど…」
テンション爆上げのミーヤは、ずっと喋り続けながら、二人で部屋の中に消えていった。
「…。はああぁぁーー。」 一人残されたオレンからは、大きなため息が漏れた。
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