幕間 その2 上司の上司
ーパーティー終了後のホテルにてー
「自分のしたことがわかっとるのかね!」
フロア部長室で怒号が飛ぶ。それを黙って聞いているショーゴの姿があった。
「まったく……。大事に至らなかったからいいようなものの。この名門ホテルの、しかも超重要人物のパーティーに、どこの馬の骨かわからんような奴を、何の断りもなく紛れ込ませるとは……。」
ショーゴの上司は怒り心頭で説教を続ける。
「ええ?! 何かあったらどう責任を取るつもりだったのかね!」
「はい…。すいませんでした。」 ショーゴの声は小さい。
「すいませんでした、じゃないんだよ! どう、責任を、とる、つもりなのかね!」
「いやでも、あいつはそんな奴じゃ……。」
「そんな奴だっただろうが!! なんだ! あれは! 来賓を差し置いてしゃしゃり出るなど、当ホテル始まって以来の不祥事だよ、君!」
不意の言葉が火に油を注ぐ。
「はい…。すいませんでした。」 ショーゴに、謝る以外の選択肢はない。
「……。わかった。責任は君に取ってもらう。今日限りでクー」
上司の言葉の続きを、部長室のドアをドンドン! と乱暴に叩く音が唐突に遮った。その音に二人とも振り向くが、こちらの返事より早く、ドアはガチャリと開けられた。
「いや~~。部長! 今日のパーティー、ヤバかったね~!」
ドカドカと一直線に進入してきた、やたらテンションの高いショーゴの上司の上司が、ズケズケと上司の手を握りブンブンと振り散らかす。
「特にあの彼! 何なんだ! あれは部長が用意したのかい?」
「いや…。あれは、そこの彼が…。」 両手を封じられた部長は顎でショーゴを指す。
「君か~。いやぁ、本当に、トンデモないことをしてくれたね~。」
と言いながら、獲物を捕らえたかのような視線をショーゴに向ける。その気迫に、ショーゴは部長とは違う緊張感に襲われる。しかし、その言葉の続きは意外なものだった。
「完全にやられたよ~。六年前のことをブラッド氏に聞くのは、中々覚悟がいるのにね〜。しっかし、ああいうやり方があるとは、まったく思いもよらなかったな~。」
部長の手を放し、今度はショーゴの肩をバンバンと叩く。
「いや、あいつの言ったことは本当で…。」 正直に話すショーゴ。
「そっか~。そんな子を態々見つけて仕込んだんだね! うんうん。素晴らしい! サップラァァイズ!! 君の献身的な貢献のおかげでうちのホテルの評判は爆上げだよ! 当然、君の評価も爆上げしとくから、次の給料は楽しみにしてくれ給え。それじゃ!」
最後にグッドサインを残し、嵐は過ぎていった。残った二人は顔を見合わせる。
「…………。」
「ウォホン……。まあ、そういうことだから。」 バツの悪そうな部長に、選択肢はない。
「はい。これからもよろしくお願いします。」
頭を下げながらも、ショーゴには笑顔があった。
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