第15話 三夫、老人に証拠を提示する

三夫は熊の置物が長者番付一位であるということと日本人形が日本を代表する女優であるということの証拠を掴んだ。つまりあの紙切れに自分の考えた属性、プロパティを書いて任意の物に貼れば世の中に認知されるという訳だ。これをもってあの紙切れをくれた老人に示せば自分の考えが正しいということになる。三夫は角地の小さな公園であの老人を待つことにした。老人は毎週水曜日に現れるかもしれないと言っていたから、三夫は水曜日になるのを待った。

水曜日になった。三夫は普段起きない様な朝に起き上がった。さすがにテンションが上がって寝不足だったようだ。

七時半。登校する小学生たちや会社に向かうサラリーマンが行き交う中、三夫はただ公園にあの老人が来るのを待っている。

「あのじいさん、気まぐれだからなー。今日も来る時間が読めんな」

「誰が気まぐれじゃとー?」

「うわ!びっくりした!!」

老人は予期せぬタイミングで現れた。

「あの、この間僕が言ってた事なんですけど」

「はて、なんじゃったかの?」

「頂いた紙に希望する職業とかを物に貼ると現実になるっていう」

「おぉ、そうじゃった!で、その事は確認できたんじゃな?」

「ええ、おじいさんがこの間持って来ていた熊の置物と日本人形について調べたら、やっぱり紙に書いてあった通りのものになっていました」

三夫はそう言うと、熊の置物の新聞記事と日本人形のスクリーンショットの印刷物を老人に見せた。

「良かろう。よく調べたの。お前さんの言う通り、あの和紙には自分が書いた特徴が物に反映されるというチカラを持つ不思議な紙じゃ。お前さんにも数枚渡してあるじゃろう。お前さんの役に立つであろう。じゃが、使い方を間違えると大変なことになる、ということもよーくわきまえておくのじゃぞ」

「はい、わかりました。この前試しに1枚使ってみたのですが、効果が現れませんでした」

「ほー、それは残念じゃったのぉ」

「何故ですか?」

「それはじゃの、あの紙には専用の墨が必要だからじゃ」

「え?そうなんですか?」

三夫は呆気にとられた。


⇒第十六話

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