第13話 三夫、証拠を探す(壱)
謎の老人に指摘された「紙切れと記入した内容」の関連性の証拠を探すべく、三夫はまず「熊の置物」について調べた。「熊の置物」の名札は「長者番付第一位」。
「長者番付って個人資産額の番付だったよな?ネットに載ってるんじゃないか?」
三夫は検索サイト「Coookle」で長者番付の記事を調べた。すると、簡単にヒットした。
「なになに、日本の個人資産額第二位はウニクロの社長さんかぁ。総資産額は、よ、4兆?は?すげーな!どっかの国の国家予算並みだな。ぶったまげだぜ!えっと、そんで番付第一位はと。あれ?第一位の人は氏名非公開になってるぞ!個人資産額は、じ、十兆?なんだそりゃ!でも名前が分からんとは!」
猫も杓子も「個人情報」という単語ばかりを口にする今の世の中、わざわざ匿名にしている個人資産10兆の超大物の名前を教えてください、はい分かりましたなどという時代ではない。三夫は困り果てた。
「マスコミ発表でも名前が非公開なのに、どうやってこの小市民が名前を知り得ることができるんだ?うーん」
すると、三夫のスマホに着信があった。悪友の梨田からだ。
「おう、暇人大先生。ご機嫌いかがかな?」
「おまえなぁ、いい加減怒るぞ」
「まあ、そう言いなさんな。今日はおれの愚痴を聞いてくれ」
「珍しいな、超優秀で有名な梨田大先生が愚痴をこぼすなんてよ」
「そんでな」
「否定しないんかーい」
「ああ、ほんとのことだからな。そんでな、就職の事なんだがな。俺はアパレル関係志望でさ、今日セカンドリテーリング、いわゆるウニクロだな。最終面接があってさ」
(なに!?ウニクロだと?聞き捨てならん!)
「お、おう。すごいな!そんで?」
「最終面接の問答で長者番付の話になってさ」
(な、なにぃ!)
三夫は思わず興奮気味に、
「そ、それでどんな話だ?」
「いやぁさ、社長が日本の長者番付で何位か知ってるか?って聞かれたから第二位ですよね?って答えたわけ」
「そんでそんで?」
「では、第一位は誰か?って聞かれたわけよ」
「ほー」
三夫は平静を装いながらも、なぜかスマホを持って前のめりになっている。
「いえ、知りませんって答えたら落ちたよ。だって、就職先のことさえ知ってりゃいい程度の事じゃん!ひでぇ質問だろ?」
「あー、そりゃ残念だったな」
(そりゃそうだよ。だって、おれも今調べてるけど分からんもん)
「で、悔しいから調べたんだよ。したら、名前が非公開になってるじゃん!そんなの数学の解なしみたいなもんじゃね?で、記事は無いかと思って探したら、じゃぱん経済新聞の記事でウニクロの社長とその名前非公開の長者番付第一位さんの対談があってさ」
「ま、まじか!その番付第一位の人の名前は何だ?」
「非公開」
「げー!」
三夫は思わずひっくり返った。
「でもな、対談の時の写真があったぞ」
「ま、まじか!それはいつの記事だ?」
「ネットにあるからあとでURL送ってやるよ」
「ありがてぇ」
「そんなかぁ?大したことでもないがなぁ。多分、面接ではその記事を読んでるか?っていう意図だったんだろ」
そのあと梨田の愚痴は留まることを知らず、延々3時間に亘った事を付け加えておこう。
梨田からURLをゲットした三夫は、さっそくURLにアクセス。すると、出てきたのはウニクロの社長と熊の置物が向き合って話している画像!
「ビンゴ!」
三夫は部屋で数度飛び跳ねた。「うるさいぞ!」と下の階の住人に怒鳴られたのだった。
⇒第十四話
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