第12話 三夫、老人に教えを乞う

 三夫が公園から去ろうとしたそのとき、あの紙きれをくれた老人が背後にちょこんと座っている。

「久しぶりよのぅ、若いの」

「お、お久しぶりです。あなたに聞きたいことがあって、ずっとこの公園で待っていました」

「ほう、何事かの?」

「実は、頂いた紙切れの使い方なんですけど」

「ふむ、何か問題でもあったかの?」

「それがですね、おじいさんのやり方を真似してるつもりなんですけど、一向にうまくいかなくて、その原因lは何なんだろうか?という事を聞きたいのです」

三夫はいつになく熱を込めて老人に詰め寄った。

「はて、何の事かの?わしにはちっとも分からんが」

「とぼけないでください!あの紙きれには物凄い力があるんですよね?」

「物凄い力とはなんじゃ?」

「あの紙に何かを書き込んで、その紙を適当なものに張り付けると、張り付けたものにその紙に書いた特性を持ち合せさせることができるってことでしょ?」

「ほう、そうなのか?」

「そうなのかじゃないですよ!事実、今の防衛大臣はこけしですよね?こけしが防衛大臣なんてあり得ない!なのにいま就任している。なぜか?それはあなたのくれた紙切れに「防衛大臣」って貼ったこけしがあったからでしょ?」

「そうなのか?ほかはちゃんと調べたうえでそういってるのじゃな?」

「ほかの2体、熊の置物と人形についてはまだ確認していませんが」

「なぬ?確認していないじゃと?!せめてもう一つくらい調べて事実関係をはっきりさせないと、そうは言いきれんのじゃないかい?」

「そ、それはそうですが」

「それを確認せずにそんな摩訶不思議なことを言い寄られてもわしも困るでよ」

「え?じゃあ、あの紙きれはただの紙切れなんですか?」

「それはどうかのう。お前さんがちゃんと調べてからわしに質問するというのが筋であろう?たった一回そういうことがあったからとて、その証拠もない。他も調べていない、ではやりようがないのぉ」

「そうですか、わかりました。もう一回調べたうえで質問することにします。ですので、次も水曜日のこの時間に現れてくれませんか?」

「うーん、約束はできんな。なんせわしもそこそこ忙しかったりするんじゃよ。では毎月奇数週の水曜日という事でどうじゃ?わしもここで商売することもあろうし。ただし時間は決められぬ。10分経ってお前さんが来なければ帰るよって。よいな?」

「わかりました」

「じゃ、よろしくな。かっかっか」

そう笑いながら老人は公園を去っていった。


⇒第十三話

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