第8話 三夫、紙の効力を試してみる

  謎の老人から貰った紙には「自分好みのプロパティ(属性)を書いて任意の物体に貼ると、その通りになる」という物凄い効力がある事が判明した。三夫は早速その効力を試すべく、紙を張り付ける物体を考えていた。

「そうだなぁ、紙を貼れば何でも良さそうだな。よし、ゲーセンのクレーンゲームでゲットしたスライムのぬいぐるみにしよう!」

 そう独り言を言うと、おもむろにスライムの大きなぬいぐるみを押し入れから引っ張り出してきた。

 お次は重要な「どんなプロパティをつけるか」である。紙は計五枚。多くはないので失敗はしたくない。一度記入すると文字は消せないようだ。

「ついにこの紙に記入する時が来たか!自分に役立つものにしたいよな。かといって失敗はしたくない。とりあえず、身近なものにしてみよう」

 そう言うと「この部屋の守り神」と油性ペンで紙に書き、大きなスライムに貼り付けた。

「これでよし、っと」

 三夫はアパートの玄関にこのくそでかいスライムを置いた。そのお陰で玄関が狭くなったのは言うまでもない。

「さて、こいつが本当に俺を守ってくれるのだろうか?」

 三夫の部屋に空き巣か強盗かの類が襲撃しない限り、その効力は検証できない。逆に何も起きず、平穏無事な生活が続くのであればそれはそれで効力があるとも言える。三夫はしばらく様子を見ることにした。

 翌日は大学の授業が無い木曜日で、天気もそこそこ良かった。貴重な晴れ間を利用して掃除することにした。

「そうだ。天気もいいから布団を干そう」

 南向きの窓の外に付いている、転落防止の柵に敷布団を干した。すると、スマホが鳴った。悪友の梨田からである。

「よう、暇人就職浪人」

「おい、暇人だが就職浪人ではないぞ」

「まぁ、そう怒りなさんな」

「だったら言うなよ」

「そりゃ失礼。ところでこの前、防衛大臣がどうのとか言ってたよな?」

「ああ」

「その話はもういいのか?」

「解決したよ。サンキュー」

「そうか、つまんねぇな。ってことで飯でも行かねぇか?どうせ暇だろ?」

「どうせは余計だ。まぁ、その件もあるし、いいだろう」

「なんだ?上からだな」

「い、いや。何となく。俺とお前の仲じゃんか」

「う~ん、なんか気になるが、じゃあ吉祥寺集合な」

「了解」

 三夫は布団を干したまま、梨田と合流する吉祥寺へと向かった。


⇒第九話

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