第2話 本当の売り物とは?
(なんてこった!内定取り消された上に、何か買わないといけないというこのシチュエーション!如何わしいものばっかりじゃないか!参ったな)
「お若いの。今、この3つのモノを見てばからしいと思ったじゃろ?」
三夫はギクッとした。図星だ。
「そ、そんな事在りませんよ」
「いいんじゃよ、お若いの。思っている通りじゃ。だがの、この変哲もないモノにも魂があるのじゃ。この3つのモノだけではなく、世の中に存在するものすべてに於いて言える事。この世に意味を持たないモノなぞ存在しないのじゃ。ただ<名前>が無いだけ。<名前>を付けてやり、大切にしてやればどんなものにでも魂は宿るのじゃぞ。そうじゃなぁ、言うなれば<名前>はこの世での<役割>じゃな」
「はぁ」
生返事の三夫には、この老人の言葉が沁みていなかったが何となく言わんとしてる事は理解できた。
「犬猫にも<名前>を付けてやるじゃろ?」
「ええ」
「<名前>を付けて世話をしてやると懐いて来るじゃろ?」
「そうですね」
「魂というのはそうする事によって出来上がるのじゃ。なんの変哲もないモノも然り」
「じゃあ、何で防衛大臣だとか長者番付第一位という名札が付いているのですか?普通に太郎だとか花子だとかにすればいいんじゃないんですかね?」
「お若いの。よくぞ聞いてくれた。実はのぉ、この3つのモノは売り物ではなく飾りじゃ」
「え、飾り?どういう事でしょう」
「売り物はじゃな、こいつだ」
老人は、古びた袋から紙の様なものを取り出した。
「これはの、わしが精魂込めて作った和紙じゃ。駄洒落じゃないぞぇ、かっかっか」
高笑いしながらその和紙の束を掌で摩っている。三夫の苦笑いが隠し切れない。
⇒第三話
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