20円

うらなりLHL

第1話

「例えば、クモの中には生まれた我が子に体を捧げるものもいる。これは残酷な話だろうか?生命の在り方が遺伝子を運ぶ船だとするのを是とするなら荷を渡し終えたと感じたら速やかに命を絶つべきだ。それは後の世代にリソースを残すためでありおかしい話ではなく、先のクモの話は残すだけでなく自らをリソースに変換した優れた進化といえるだろう。ならば人はどうだろうか。人は遺伝子のバトンをつなぐことをやめても生き続けることを選んだ。そして、人は生命の在り方を果たすために生きるだけでなく、必要以上に栄養を補給する。飢餓に対する備えを超えて肥えることも厭わない。これは後の世代のことを考慮していない。なら何故そうするのか?一言にすればそこに快楽があるからだ。エネルギーを多く持つ脂肪や糖分を快とし、毒かもしれない苦味や渋みを拒絶する。エネルギーにできるということは生命を持続させるのに有用だということ。つまりは快楽は生命の役割を果たさせる道標なのだな。しかし、一方で快楽は生物をそれへと走らせ、目先の快楽のために破滅を招くことがある。そこには生命としての在り方に反しながらも生命の役割をこなすために蓄積、効率化された機能美があるということだ」

「つまり、何の話?」

「チョコは美味いってことさ」

「はい、義理チョコ」

「ありがとうございます」

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