神楽耶 夏輝様
両想いの二人が些細なことをきっかけに離れてしまい、添い遂げることができなかった。だが、人生の先で思わぬ心の再会を果たすと言う物語。若年性アルツハイマーに侵された彼女が、最後に心に留めていたのは果たせなかった恋心。それを知った主人公が、この先の人生を彼女の想いを抱えて生きていこうと決意する物語。
静かな余韻と人生のままならなさをしみじみと感じさせる悲しくも温かい物語だと思います。
ただ……神楽耶さんが、西寄りに書きたいと思っていること、この先もまた改稿にチャレンジしたいと思っていらっしゃるようなので、辛口コメントを失礼しますね。
今のままだと、北だなと思います。西寄りにもっと持っていきたかったら、しみじみとした余韻が必要です。その余韻を阻害しているのが、一例で言えば前編の、彼女の御主人からの手紙を読んでクエスチョンマークが浮かんだと言う表現。これはエンタメ的表現のような気がしています。戸惑う、不安定な気持ちになる、驚きで目を見開く、眉間に皺を寄せるなどの言葉を使って表現したほうが西寄りになるかと。ココは特に、彼と、過去に無理やり置いて来た彼女との再会に繋がるので、もっと彼の戸惑いが強く出るところなのでは無いかとも思いました。
後半で言うと、第二ボタンのことが、二人の仲を引き裂くきっかけになったと知った時の反応。軽いなぁと。ここはもっと衝撃を受けるはずです。彼はその後、携帯で何度も彼女を責めていましたよね。でも、本当の理由は彼の落ち度にあったわけです。物凄くショックを受けると思うし、それがきっかけでこんなに二人は遠くまで離れてしまったとしみじみ思うのではないかと。そうしたら笑えないじゃないかなぁと。ご主人への気遣いとして笑ったとしても、引きつった笑いになるのではと。
そんな彼の心の葛藤や衝撃を、そのままストレートに書くのでは無くて、表情や仕草で書いて行間を読ませるように書くと西寄りになってくると思います。
素材のテーマは十分西だと思うので、もう少し安易に置いてしまった言葉を書き換えていけばいいのではと思いました。
後、焼香は違うような気が『線香をあげる』ですね。
そして、彼女の御主人が凄くカッコよいと思いました(笑)
色々言いたい放題書いてしまいましたが、私自身も改めて気づかされたことがたくさんあって。作品のテーマは大好きなテーマです。楽しませていただきました。
作者からの返信
返信遅くなり申し訳ありません。
細かい部分まで読み込んでくださり、心より感謝いたします。
ご意見も大変参考になり、今後の課題と改稿にぜひ活かしたいと思っております。
お時間をとっていただき、改めて感謝申し上げます。
この作品で一番表現したかったのは、初恋の甘くて切ない気持ちです。
それを表現するのに、若年性アルツハイマーという舞台装置は大きすぎたかもしれないと反省しています。
できれば文芸に寄せたかったのですが、主人公の一人称視点と言う事もあり、等身大の主人公を描きたかったというのもあります。
その上での言葉選びでした。
この頃、エンタメばかり書いていたので、読者を引き込む事にばかり熱心だったかもしれません。
最後まで楽しんで欲しいという思いから、こういう作品になりました。
フィンデルさんもおっしゃってますが、最終的に作者が西だと言えば、西。確かそう書いてらっしゃったと思うので、これが僕の西と言う事で^^
リアルさと物語的な美しさのバランスが良いなと思いました。フィンディルさんの解釈を見た後なので方角については、ははあ、なるほど泣ける系の北とはこういう感じの作品なのかぁ、と。下手な書き方になると過去で相手方は亡くなっているとはいえ、不倫っぽいっていったらあれですが、偽善っぽくなりそうなのですが、この作品はそういういやらしさがなくていいなと思いました。
作者からの返信
コメントありがとうございます^^
方角、最初決めたはずだったんですが、書き進めると見失いますね(笑)
恋愛小説でありがちな、ヒロインが難病により死ぬ、みたいなのは回避したつもりだったんですが、読み手にはそんな風に見えてしまうかもしれませんね。
この作品はもうしばらく寝かせてなら、また再び向き合いたいなと思います。
ああ、こりゃすごいです。
とんでもなくすれ違ってしまった二人の思い出の話ですね。いや、素晴らしい。
これ若干俺の経験と重なるところありますよ。まあ俺の場合相手は死んでませんし病気にもなってませんからなんかのはずみで再会したりするかもしれないなとか思うことあるんですけどね。
この感覚は多分女の人には理解してもらえないでしょうね。
いや、しかしナツくん腕を上げましたねー。これは素晴らしいですよ。お見事でした。
作者からの返信
めっちゃ嬉しいです!満点のお星さまも!!ありがとうございます^^
いやぁ、僕も半分は自分の経験ですね。
もちろん、僕も相手は死んでないですし、病気でもないんですけどね(笑)
女の人にはわからない感覚でしょうね。
多分、怒る人もいるんじゃないでしょうかね。
奥さんいるのにとか、言われそうですよね。
これはもう意地になって頑張って改稿しましたので(笑)
褒めていただけてめっちゃ嬉しいです!!
自主企画から拝読いたしました。
読んでいて心に強く響く、甘くも切ない初恋のお話でした。
最後の、弥生さんが遺した手紙を読みながら、主人公がその手紙に答えるように、自分の想いや昔のことを語るシーンがとても良かったです……!
私は初参加なので方角は詳しくありませんが、私は北北西かなと感じました。
作者からの返信
読んでいただき、丁寧なコメント、お褒めの言葉、評価★までありがとうございました。
企画初参加で勝手がよくわからず、主催者様の意図とは違う動きをしているかもしれません。
もしご迷惑をおかけしていたならすみません。
僕はこれまで、読み合いの自主企画には参加してこなかったんですよ。
好みじゃない作品も読まないといけないっていうプレッシャーになりたくないというのと、自分の作品を好みじゃないなと思いながら読まれるのもイヤで。
けど、今回参加してみて、とてもよかったなって感じます。
あえてこれまで避けて来た作品も読んでみたら面白かった、刺さったという感覚にも出会えました。
企画慣れされてる方は、感想もお上手で、心折れる事なく今後の執筆の励みにもなりました。
泡沫さんの作品、とても素敵でした。
ご縁があってよかったなと思ってます^^
ありがとうございました。
編集済
甘じょっぱい!場面がするすると流れ、感情がじわあってきました。ああ、思い出してしまった!話した事もない相手に初めて体育館の裏に呼び出してチョコレートを渡した。そして振られた。あの時のどうしようもない恥ずかしさと胸の鼓動、狂おしいほ恥ずかしい気持ちとちょっとの切ない気持ち。何十年も前のことなのに、生々しく蘇るその記憶そしてその時の感情も。この作品を読んでくっきりはっきりまた今更思い出して恥ずかしい、痛い私にとっての黒歴史。だけど、それが、この物語を読見終わった後には宝物にしたいと思い直しました。
人物も丁寧に描かれていて、ああ、学生服の第二ボタン、、、それさえが甘酸っぱい。ああそうだったのかと物語としてしっかり伝わりました。疑問も解き明かされ4話読んだような贅沢な面持ちです。
クリアでよどみなく読めて大満足です。
作者さんの発想力と構成力にまた驚かせられた。心を動かされる物語をありがとうございました。
そしてとても美しい純文学(が何かは知らないですが、そう呼びたい。)になったように思えてます。
素晴らしいです。
作者からの返信
そう!そういう事を読者に思いださせたかったのです(笑)
初恋って本当に上手くいかないって事が多いんじゃないでしょうか。
でも、純粋になりふり構わず恋をした。
そんな切ない思い出。
純文学を目指したかったのですが、エンタメっぽくなってしまいましたね。
実を言うと、この作品はもう葬ろうと思ってました。
けど、物語は生まれてきただけで価値がある、と、教えてくれた方がいて、推敲して再掲する事を決めました。
自分自身が生み出した物を大切に思える事が大事かなと思いました。
2度のお付き合い、ありがとうございました。
初稿より良くなったと言って頂けて嬉しいです。
こんばんわ! 後編を拝読いたしました水木レナです。
あれっと思いました。
心情が丁寧に描かれています。
半面ラストがそうでなかった分、胸に刺さるのです。
西? 西なのか!? 丁寧な思考誘導から北かなアと思っていたので焦りました。
タグは――北西! そうか。
残念なのはヒロインがもうこの世にいないという点ですね。
そう思わせる点で御作は上手くなさってると思います。
読後感が甘いのか痛いのかわからないです。
しかしお見事でした。
作者からの返信
ありがとうございます。
痛いのか甘いのかわからない、複雑な読後を狙いました。
もう、この世にいないからこそですね。
いないからこそ、知り得た彼女とのすれ違いです。
黒歴史が、甘くて切ない思いに変わった瞬間でした。
読了、ありがとうございました。
奥さんの最後の思いを届けた旦那さまが素敵すぎますね。
主人公の心に残る瑞々しい甘苦さと、旦那さんがつらぬいたおおきな愛と。短すぎた人生でもきっと彼女はしあわせだったのではないかなと思えました。
ちなみに、わたしは介護士という仕事がら認知症の方と日常的に接しているんですが、認知症が進行すると文字を書けなくなる方がとても多い印象があるんですね。
なので、たとえばひらがなが多いとか、ところどころ漢字を間違えてるとか文字がゆがんでいるとか、そういう描写があると、認知症の人の手紙っぽさが出るかもしれないなと思いました。
もちろん一概にはいえませんし、医学的なデータとかでもなくわたし個人の印象でしかないので、あくまでご参考までに。
作者からの返信
嬉しすぎる感想、ありがとうございます。
まだ、自分のなかでは納得できてない仕上がりなので、少しずつ改稿を重ねていきたいと思ってます。
自分の中で仕上がり!と思えた暁にはもう一度読んで頂けたら嬉しいです。
認知症、進行すると文字が書けなくなる!!
それは、初めて知りました。
リアルなご経験からのアドバイス、ありがとうございます。
それ、切ないですね。文字が歪んだりするの。
是非、取り入れさせて頂きたいと思います!!
指摘:この手紙は、病魔に侵されてから書かれたものですよね。
ですと、もう少しわかりやすく、その点記載があるといいのかな? と思いました。
丁寧に読まないと、中学生の時からのラブレターが保存されていたようにも読めてしまう可能性ありです。
質問:
作品全体の解釈としては、主人公に対する気持ちだけが残ってラブレターを書き続けたというよりは、中学生の時の彼女に戻ってしまってその時の現実を生きていた結果がラブレター、という解釈が妥当でしょうか?
褒め:
主人公に対しては青春時代の甘さを思い出させるが、ヒロインの夫に対しては非常に残酷な点を突き付ける点が、この物語の良さであり、「沼」というキーワードに合致していて良いと思いました。
方角:
北西?
作者からの返信
ありがとうございます。
そうです。
病魔に侵されて、中学生の頃の彼女に戻ってしまったんです。
もう少し、わかりやすく! ですね!
お褒めの言葉、ありがとうございます。
主人公も、結婚してますからね。
奥さんに対しての背徳感とかも、もっとうまく表現したかったのですが。
アイデアとして自分ではとても好きだったので、早くみんなに見せたい一心で、公開しました。
これ以上、書ける気がしてなくて、自分でもなんだか惜しい仕上がりだなと思いつつ、どこをどうしたらいいのかわからず、皆さんのご意見を参考にしようかなと思ってました。
こんなにたくさんの人が読んでくださると思ってなくて、もっとちゃんと手を入れてから公開すればよかったなと思いました。
切ないのですが、こういう沼なら浸かり続けていたいなと思えました。
あの頃の2人は確かに恋をしていた。
その思い出や想いの詰まった手紙は、自分の大切な一部となって生き続けますからね。
素敵な作品をありがとうございました。
作者からの返信
ヒナさん、ありがとうございます!
初めて人を好きになった時の感覚って貴重ですよね。
恋愛においては一番幸せで、一番苦しい。そしてそれがとても楽しかった。
あんな思いってもう二度と訪れないんですよね。
どんな素敵な恋だとしても初恋って絶対に超えませんよね。
それをまた味わってしまったとしたら、二度と抜け出せない沼にハマりそうです。
そんな事を書きたかったのです。
もうちょっと頑張ります。
推敲後、また読んで頂けたら嬉しいです。
企画への参加が遅れ、改稿前の作品を読んでいないのですが、引き込まれる世界観の作品でした。
舞台装置としての若年性アルツハイマーは「なるほどな」と感心いたしました。
他の方へのコメントによれば、表現したかったのは初恋の甘く切ない気持ちだとか。
であれば、いっそのこと天国の弥生さんに宛てた手紙の形式で書くのもひとつの手だと思います。
書簡体小説という枠組み、小説の技法を使うことになるので、フィンディルさんの分類上では北寄りと判断される可能性がありますが、主人公の心情をストレートに表現できるのではないでしょうか。
作者からの返信
コメントありがとうございます。
書簡体小説といった形でのチャレンジはした事ないですね。
参考にさせていただきます。