第4話 河川敷バトル

「こ……これは何? 何で僕の瞳は機械なの?」

「自覚していなかったようだな。貴様は諜報用の自動人形だ。遼東共和国製のつるぎ二一型。私と同じ名が気に入らん」


 僕は嫌われてる?

 さっき本命だって貰ったチロルチョコは何だったの?


「ほう……よくできているな。その戸惑う反応は人間そっくりだ。綾瀬重工のRHevXシリーズのコピーだという噂は本当だったんだな」


 綾瀬重工のコピー? もう黒沢さんが何を言っているのか全然わからない。


「さて、私は私の任務を遂行しなければいけない。貴様を解体するのは惜しい。私に従え」

「えーっと。黒沢さんの任務とか解体とか何の事ですか?」

「さっき本命チョコを進呈した。貴様は喜んで受け取った」

「はい。メチャ嬉しかったです」

「私と恋人関係になりたければ私に従え。逆らうなら解体する。そういう事だ」


 これは怖い。僕を解体すると何かのスプラッター映画みたいになると思う。僕は死にたくないし黒沢さんと恋人関係になれるならそっちの方がいいのは当然だ。だから僕は彼女の提案に乗ろうと思った。


「黒沢さんに従うよ。だったら僕たちは恋人同士なんだね」


 それを言った瞬間、僕の脳裏に火花が飛び散った気がした。その火花を言語化するとこんな感じだった。


『緊急コード発令。戦闘モードへ変形』


 途端に僕の左腕は何かの銃のように変形していたし、右腕はチェーンソーのような大型のカッターへと変形していた。


『敵を排除せよ』


 再び脳内に火花が飛ぶ。僕は大好きな黒沢さんに向かって左腕の銃を連射していた。


 プラズマ光弾が幾つも炸裂する。黒沢さんの動きを予測した射撃なんだけど何故か命中しない。当たらない。でもそれは黒沢さんを追い込むための威嚇射撃だ。彼女が回避した所へ回転するチェーンソーを叩き込んだ。人間なら内臓が飛び散る凄惨なシーンが再現されるはずだった。


 でもそうはならなかった。いつの間にか黒沢さんが握っていたレーザー剣が僕の右腕を斬り落としていた。痛くないし血も出ない。その時になって僕の体は普通じゃない事に気が付いた。


 左腕の銃はプラズマ光弾を吐き続ける。しかし命中するどころじゃなかった。黒沢さんは瞬間移動をしているかのような、断続的に姿が見えなくなる超加速を繰り返していたからだ。


 彼女のレーザー剣が僕の左腕を斬り落とした。そして僕の胸を貫いた。


「どうして……」

「貴様を排除するのが私の任務だからだ。しかし、私に従うなら解体はしない」


 僕は黒沢さんの奴隷になってもいいって位に彼女の事が好きだった。でも何故、僕が彼女を殺そうとしたのかわからない。僕の体から武器が出てきた理由もわからない。


 再び脳内で火花が飛び散り、僕はそのまま意識を失った。

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