第2話 チョコは屋上で貰えるらしい
「よく来たな。
「黒沢さん?」
僕を呼び出したのはあの黒沢さんだった。そして彼女は何かピンク色の小ぶりな紙袋を携えていた。
「わざわざ呼び出してすまない。貴様にこれをやろう」
黒沢さんはそのピンク色の紙袋を僕に差し出した。
「これは?」
「チョコレートだ。ヨーロッパの某山岳地帯の名を冠する製品を大盤振る舞いで100個詰めにした」
これはチロルチョコの詰め合わせなのか? 100個ってずっしり重い。いや、問題はそこじゃない。黒沢さんが何故、僕にチョコをくれるのかだ。まさか、これは本命チョコなのか。それとも義理チョコなのか。いや、僕にとって本命が義理かはどうでもいい。母親以外から貰えた人生初チョコなんだからもう飛び上がってしまいたいくらい感動していた。そして何故か僕の両目から涙がこぼれていた。
「ありがとうございます。メチャ嬉しいです」
僕はその場で45度の最敬礼の姿勢を取った。
「ああ、霜川。そのチョコは一応本命という奴だ」
何だって?
本命?
そんな馬鹿な?
いや、一応ってついてるのは何の事?
「期間限定の本命だ。私と付き合ってくれ。異論はあるか?」
「ありません」
僕は姿勢を正して黒沢さんを見つめた。メチャ恥ずかしくて赤面しまくりで顔が熱くなっているが、でも同時に嬉しくて嬉しくて体中が震えていた。
「よろしい。私が義理ではない本命チョコを贈った事がどれだけ稀有な事か分かるか?」
「よくわかりません。でも、僕がチョコを貰った事も超稀有な事だと思います」
「そうか。あはは」
何故笑うんだろうか。しかし、黒沢さんの笑顔なんて見た記憶がないのでそれはそれで嬉しい。それは実に可愛らしい。
「では霜川君。貴様に命ずる。今から学校を抜け出して河川敷に行くぞ」
「河川敷?」
「さあ来い!」
黒沢さんは僕の手を引いてふわりとジャンプした。屋上のフェンスをちょこんと蹴飛ばして更にジャンプする。僕の体も彼女と一緒に浮き上がっていた。何で体が浮いてるのかわからない。
そのまま体育館の屋根に着地し再びジャンプする。そして大きく弧を描いて裏の通用門の傍に着地した。
「どうなっているの? 空を飛んじゃったみたいなんだけど」
「気にするな」
気にするなって、気になるでしょ。どうなってんの。
「少しツーリングでもしようか。これに乗れ」
黒沢さんが指さしていたのは電動スクーターだった。
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