甘剣(あまけん)
暗黒星雲
第1話 バレンタインデーの朝
今日はあの日だ。
そう、 英語では St. Valentine's Day と表記される運命の日。
モテモテのリア充と超寂しい非モテが厳しく峻別される、伝統的に非モテ男子が地獄を見る日なのである。
もちろん僕は憂鬱だ。ボッチで帰宅部で陰キャ。自慢ではないが、非モテ男子中の非モテ男子とは僕の事だ。これには自信がある。
そんな僕でも気になっている女の子はいる。
その子の名は
寡黙で他の女子とつるまない。地学部で天体観測が大好き。数学などの理数系の科目が得意。体育の授業はいつも休んでいる。中東の人かって位に色黒の肌で、二重だけど釣り上がっている目元は非常に鋭い。身長は165センチくらい。もちろん目測だ。体重は多分55キロ。これは推測。スリーサイズは上から86・62・88。これ憶測。細すぎず均整が取れた体形はめちゃくちゃ美しいと思う。
僕は彼女と親しくなりたい。できればお付き合いしたいと思っている。でも、話しかける勇気はないし、仮に話すとしても何を話していいか分からない。
だから僕は、日々黒沢さんを観察してその記録を綴っている。いつの日か彼女とお付き合いできた時に失敗しないように、彼女の詳細な情報をできるだけ集めておく必要がある。
黒沢さんは早めに登校する。始業の30分くらい前には席についているのが普通だ。だから僕は彼女よりも少し早く教室に入るよう心掛けている。彼女の仕草や行動を見逃したくないからだ。これで大体、クラスで一番か二番になる。
今日は特に早く登校した。多分僕が一番だ。そう思って下駄箱の上履きを掴むとその中に何かがあった。
折りたたんだメモ紙だ。誰かが僕よりも早く登校してこれを入れたのか。いや、昨日僕が帰宅したあとに入れたのかもしれない。
どっちの可能性もある。しかし、このメモ紙は何? もしかしてラブレター……いや、そんなわけない。
差出人は誰だろう。何かの悪戯か。万が一ラブレターだったらどうしよう。いや、決闘状のようなものかもしれない。僕は周囲を見渡し誰もいない事を確認してからそのメモ紙を開いた。
そこには一言だけ書かれていた。「今すぐ屋上に来い」と。
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