knock
青空
第1話 knock
あの時、間違えていたら…
私はミユキ
どこにでもいる普通の大学生
付き合って3年になる彼がいる
彼の名前はサトル
優しくてカッコ良くて自慢の彼だ
「ねぇミユキ?聞いてる?」
彼女はサキ
小さい頃からの幼なじみで小、中、高
そして大学まで一緒の大親友だ
私達は就活も終わり学生最後の旅行を計画していた
と言ってもそーゆー事が苦手な私はいつもサキとサキの彼氏のシンジ君が決めてくれた事に従うだけなんだけどね
マメな親友がいて本当に助かるの
「またいつものペンションでいいよね?マスター達にも色々と報告したいもんね?」
「そーだね。あぁーこの4人で行く旅行も最後になるかもね。なんだか寂しいなぁ。」
「ちょっとミユキ。行く前からそんな事言わないでよ。新しい水着買って海で思いっきり楽しむんだから。」
「そうね。最後くらい寝坊しないでねってシンジ君に言っておいて。」
旅行当日
朝6時、集合時間になってもサキとシンジ君は現れない
「学生最後の旅行かもってゆーのにシンジの奴また寝坊かよ。」
「まぁシンジ君らしくて良いんじゃない?」
「ミユキは甘いよ。社会人になったらだなぁ…。」
そんな事を話していると
ブオオオーン
猛スピードでシンジ君の車が来た
「本当にゴメーン。マジゴメン。マジゴメン。」
猛烈に謝ってくるシンジ君を見て
「ぷっあははははっ。」
私達は思わず笑ってしまった
「2人ともちゃんと怒ってよ。」
怒った顔のサキが言っている
「まぁまぁ、きっとこのメンバー最後の旅行だし楽しもうぜ。社会人になったら寝坊しないよな?シンジ。」
シンジ君は安心した顔で
「もちろんですとも。」
「サキも怒ってないで楽しもう?ね?」
私がそう言うとサキは少し申し訳なさそうに笑った
「じゃあシンジ君、いつも通り荷物お願いね。」
「アイアイサー。」
そう言ってシンジ君の車に荷物を乗せて
サキとシンジ君は車で
私達はサトルのバイクで海に向かう
普通ならみんなでワイワイ車で行った方が楽しいんじゃないかって?
理由は簡単、私もサトルもバイクで風を切るのが大好きなの
だから旅行はいつもこれがあたりまえになっていた
あっと言う間に海に着き私達は海で泳いだりビーチバレーをやったり寝坊のバツとしてシンジ君を砂浜に埋めて記念撮影をしたりと学生最後の夏を全力で楽しんだ
日が沈みかけた頃
「そろそろペンションに行こうぜ。早く酒が飲みたいよ。」
男子2人は我慢が出来ない様子なのでペンションに向かう事に
「サトル、ペンションまで競争しよーぜ?」
「別にいーけど負けた方が飲み代奢りな?」
「危ないからやめなよ。」
サキがそう言うと
ポツッポツッ
雨が降ってきた
「ミユキ、濡れちゃうからシンジの車に乗ってけよ。」
私は言われた通りシンジ君の車に乗せてもらった
「でも競争はするぜ。ヨーイドン。」
少し心配だったがそのままペンションに向かった
「ねぇ?ミユキ?ねぇってば。」
私はサキに肩を揺されおこされた
海ではしゃぎすぎたせいか眠ってしまったみたいだ
「ミユキには悪いけど飲み代はサトルの奢りな。」
雨が降っていたせいかバイクのサトルはまだ着いていなかった
私達はサキ達の部屋でしばらく待っていたがサトルはまだ来ない
もう1時間くらいたっている
「アイツおせーな?先に飲んじゃうかな。」
シンジ君が缶ビールに手をかけた時
コンッコンッ
ドアをノックされてシンジ君が勢い良くドアを開けた
「おせーよ。」
そこには見知らぬ男性が2人立っていた
その2人は私達に警察手帳を見せて話を始めた
「すぐ近くでバイクの事故がありお友達のサトルさんが亡くなりました。念のためですが確認に来ていただけますか?」
サトルが事故?
亡くなった?
嘘でしょ?
私達はシンジ君の車でその2人が乗ったパトカーについて行った
ドラマみたいに白い布が被せられた遺体
顔を確認すると確かにサトルだった
私は息が出来なくなってその場で倒れてしまった
どんなに間違いだと信じたくてもその遺体は確かにサトルだった
さっきまで一緒にいたじゃない?
海で一緒にはしゃいでたじゃない?
どーして?
どーしてなの?
私は大きな声で泣きながらうずくまってしまった
するとサキとシンジ君が凄く真剣な顔で
「ミユキ、落ち着いて聞いて。サトル君は夜中の2時を過ぎた頃あなたに会いに来る。でも絶対にドアは開けてはダメよ。ミユキを向こうの世界に引き込もうとする。ドアを開けたら引き込まれるからね。絶対にドアを開けてはダメよ。」
そんな訳ないじゃない
だって目の前の遺体は間違いなくサトル
それでも2人が真剣に言ってくるので私は1人眠らず起きていた
あんな別れかたじゃ嫌だ
オバケだって良い
もう1度会いたい
夜中の2時を回った頃
コンッコンッ
???
もしかして本当に来たの?
私がドアの前に行くともう1度
コンッコンッ
「ミユキ?俺だよ。開けてくれよ。」
本当にサトルの声だ
思わずトアノブに手をかける
『絶対にドアを開けてはダメよ。』
オバケでも良い
もう1度会いたいよ
ドアの向こうから続けて
コンッコンッ
「俺だよ。開けてくれよ。」
どーしよう?開けたいよ?でもどーしよう?
すると次第に
ドンッドンッ
「俺だよ。開けろよ。」
ドンッドンッドンッ
「おい。開けろよ。」
ドンッドンッドンッ
ガシャンッガシャンッガシャンッ
ドンッドンッドンッ
「おい。開けろよ。開けろよ。」
ヤバい
絶対悪い霊だ
「あああああああー。」
私は怖くなってドアの前でうずくまってしまった
ドンッドンッドンッ
ガシャンッガシャンッガシャンッ
ドンッドンッドンッ
ガシャンッガシャンッガシャンッ
「おい。開けろよ。開けろよ。開けろって言ってんだろ。死んでんのはお前らなんだよ。」
ふわぁーっと光に包まれた後
私は病院のベッドの上で目を覚ました
そこには泣きながら必死に私の頬を叩くサトルがいた
knock 青空 @aozora225
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