バレンタインのオフィスラブ

夕日ゆうや

オフィスラブ

 オフィスビルの建ち並ぶ都心。その一角で俺と音子ねねは残業に追われていた。

「たく浅野あさののやつ。彼女とのデートで定時で帰りやがった」

「先輩。口悪いですよ」

 音子がお茶をもってきて、デスクにのせる。

「わりぃ。でもあいつ明日のプレゼン資料を任せてきたんだぞ」

「大丈夫です。私も手伝いますから」

 そう言って音子が隣の席でプレゼン資料をまとめ出す。

「あーあ。もう十二時になっているじゃないか」

「せーんぱい」

「ん? なんだ音子さん」

 ちなみにオフィス内で同じ名字だったので音子は下の名前で呼んでいる。

「ハッピーバレンタイン」

 ニタニタと笑みを浮かべながらハート型の包みを渡してくる。

「え。ああ……。ありがと」

 目を背けながら受け取る俺。

「これはピーナッツ入りのチョコだから歯触りがいいと思います。先輩好きですよね?」

「あー。まあ、キュウリとかラッキョウとか、砂肝とか好きだからな」

「ふふ。それなら良かった。本命ですよ?」

 嬉しそうに微笑む音子。

「さあ、作業に取りかかろう」

「逃げないでくださいよ。先輩!」

「いいだろ。別に……」

「よくないですよ。私の将来を決めることですし」

 しょ、将来……!?

「えっと。考えておく。お返しはホワイトデーだ」

「先輩のへたれ~!」

 またからかわれているのだろうか……。

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バレンタインのオフィスラブ 夕日ゆうや @PT03wing

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