第十五話
目を覚ましたら知らない天井でした……。
何て…ふざけてる場合じゃないな。
音を立てないようにゆっくり体を起こすと、掛けられていた布団がずり落ちた。
…待てよ、何で誘拐してきた奴に布団何で使わせてるんだ?
俺は良く分からない状況を打破する為の手がかりを探しに部屋の物を一つ一つ確認していく。
……素人目だがどれも高そうなものばかりだ。
部屋は障子で仕切られていて、壁には掛け軸なんかが飾られている。
それに、耳を澄ませてみれば色んな人の声が少し遠くで聞こえてくる。
つまり……俺は広い和風家屋の一室に居る…と言う事か。
ううむ、更に訳が分からなくなってきた。
て言うか、今日月曜日じゃないか、学校さぼりになっちゃうなぁ…元々あんまり休めないってのに。
しゃあない、とっとと此処から脱出するために、天井を吹き飛ばすとするか…。
装備なんかは今度回収しよう。
『身体能力強化』……?
「うわ!何だこれ!」
魔力の流れが悪くて、体を再度確認すると、体中に魔力やらステータスを抑え込む刻印が余すところなく刻まれていた。
道理で魔力の巡りが悪い訳だ。
此処までびっしり書かれてたら、流石に”耐性”が付くのにもかなりの時間を要する。
しかも量だけじゃなくて、刻印一つ一つの作りが微妙に違う。
恐らく、耐性を得るには4時間ほどかかるだろうな…。
それに、よく見てみれば天井には5,6重の魔法陣が薄く描かれており、もしあのまま一撃叩き込んでいたら天井は壊れず、発動した魔法によってより不利な状況へとなっていただろう。
……仕方ない、地道に脱出していくとするか。
さて…右か、左か、はたまた正面か…何処に進もうか…。
……何だか、左の方から途轍も無く恐ろしい気配を感じる。
言いようの無い、何か鳥肌が立つような…。
いや、怖がってちゃ駄目だ。S級冒険者が一人行方不明になったなんてニュースが出回ったら色んな人たちが不安を抱えて日々を送る事になる。
それに、今の俺は仮面を着けていない。
つまり、誘拐した者達は俺の素顔を知っている…と言う事だ…。
…良し、行こう。
俺は大きく息を吸いこんで、音を立てぬようにゆっくりと障子を開いた。
「………え?」
部屋には3っつの大きな液晶が置かれていて、暗い部屋を煌々と照らしていた。
そして、壁には大きな地図と、付箋が貼られていて、隙間にはビッシリと埋めるように写真が貼られていた。
……何…これ…怖すぎる…。
この地図、俺が住んでる地区だよな…何かのルートを確認してるのか?
付箋に目を向けると、時間が細かく書かれていて、「起床、登校、下校、帰宅」が多く書かれていた。
そして…写真には…。
「俺の写真…?」
写真には制服をきた時の物や、私服の時、【剣王】として活動している時の写真もあった。
「お目覚めになられましたか」
突然背後から声をかけられて、俺は急いでその場を離れる。
声をかけて来たのは、メイド服に身を包んだ能面の様な表情を浮かべた女性だった。
「申し訳ありません。驚かせるつもりは無かったのですが…朝餉の準備が出来ましたので、お呼びしました」
女性は伏し目がちにそう告げ、優雅に一礼すると部屋を出て行った。
何が目的化は分からんが…取り敢えず、付いて行くしかないか…。
俺は恐る恐る、メイドさんに付いて行った。
このメイドさん、気配が凄く薄いな…恐らく、異界から出て来た俺を誘拐したのはこの人だろう。
この人たちの目的は何なんだ。
金が欲しいのか?強い手駒が欲しかったのか?冒険者協会への脅し?
どれも違うような気がする。
さっき見た部屋から垣間見える俺への狂気的なまでの執着。
つまり……狙いは俺ってことか?
ううん…何か己惚れな気がするな…。
色んなことを考えていると、突然メイドさんが歩を止めた。
「此方で主がお待ちです。どうぞ御ゆるりと主との朝餉をお楽しみください」
…嫌だ!…とは言えないよなぁ…。
チラッとメイドさんを見てみると、不思議そうに此方を見ていた。
逃げ道は無いか…。
俺は意を決して襖を開いた。
「お待ちしておりました湊様」
「あんたは…!皇華凛……ッ!」
襖を開いた先に居たのは皇家次期当主候補、皇華凛だった。
104名無しの冒険者
昨日日本海上で白い閃光が見られたらしいぜ
位置情報はここら辺らしい……https~~
106名無しの冒険者
>>104
へー…何か実験とかやってたんかな?
107名無しの冒険者
そういう時は冒険者協会に問い合わせれば大体解決するで
110名無しの冒険者
>>107
どうせA級か誰かが魔法使ってやらかしたとかじゃないの?
111名無しの冒険者
いや海上だって…
112名無しの冒険者
ワイ近場なんやけど、一週間前くらいから其処らへん封鎖されとって漁師のおっちゃんたちが嘆いてたわ
114名無しの冒険者
>>112
異界かなんかが出来たんやろ
115名無しの冒険者
それじゃあ異界外で何か起こるのは可笑しいだろ
116名無しの冒険者
じゃあ異界侵攻?
118名無しの冒険者
>>116
侵攻の場合周りの住民みんな即避難じゃ
119名無しの冒険者
うーん……じゃあ何なんだろう
121名無しの冒険者
>>119
ワイはS級による仕業だと思っとるで
122名無しの冒険者
そりゃそうか
123名無しの冒険者
それ以外ないわな…
124名無しの冒険者
>>121
ちょっと待って、そうなると近場のワイヤバくね
125名無しの冒険者
>>124
ドンマイ
126名無しの冒険者
>>124
骨は拾ってやるで誰かが
127名無しの冒険者
>>124
そういう日もあるよね
128名無しの冒険者
>>124
誰が来てたとかわかる?
129名無しの冒険者
>>125>>126>>127>>128
覚えとけよお前ら
>>128
分からん特に騒ぎにはなっとらんかった
130名無しの冒険者
ほえー…
じゃあS級とちゃうか
131名無しの冒険者
つまりS級以外の誰かって事?
132名無しの冒険者
ヤバくね
133名無しの冒険者
ヤバい
134名無しの冒険者
129は?
135名無しの冒険者
>>134
今から冒険者協会に電話かけてくる
136名無しの冒険者
>>135
いってらー
137名無しの冒険者
こりゃ結構な問題になりそうだな
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218名無しの冒険者
冒険者協会に連絡つかん
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・キャラクター紹介
・皇華凛
今回の誘拐騒動の犯人。
御三家と言う事も有って、凄まじい権力を有している。
実は彼女と彼女の両親はあまり仲が良くない。
理由としては、娘である彼女があまりにも優秀すぎた為、両親がその才能に恐怖して距離をとるようになってしまった。
因みに、ほかの親族たちからは普通に目の敵にされている。
彼女自身野心家な一面があるものの、両親を喰って成り上がろうとは思っていないため、どこかのタイミングで元の関係に戻れたら良いなとは思っている。
しかし、そんな彼女だが、湊への愛情がマリアナ海溝もビックリな深さをしている為、湊が絡んだ瞬間、理性がぶっ飛んでしまう。
どこかのタイミングで誘拐して我が物にしたいと思っていたが、日本海海上異界の話を聞いて、それを好機ととらえ、自分のメイドを送り込んで無事誘拐してきてしまった。
・メイドさん
普通にかなり強い。
流石に御三家である皇華凛は超えないとは言え、A級冒険者の最上位、S級冒険者の入り口につま先が触れているか…?というレベルである。
寡黙で無表情、色素が薄い髪色とそのつり目からキツイ人物だと勘違いされがちだが、かなり優しい人である。
何となく叔母さんに似ているな…何て湊は思っている。
因みに、この人もこの人で湊への愛情は深い…しかも、重い。
・用語紹介
・刻印
バフからデバフまで色んなことが出来る万能な魔法。
体に魔法陣を描くことで対象の魔力を吸って描かれた魔法を発動する設置型の魔法と言える。
余り覚えている人は少ないが、極めると有効な手札となる為、伸び悩んでいる人は簡単なものからやってみると良いかもしれない。
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