第8話

先程のオーガ以降、出来るだけ力をセーブしながら何か感知に引っ掛かり次第切り捨てていく。


特に危なげなく進んでいく配信。

そんな中、ふと気付いたことがある。


…これ、面白く無くね?


何でもそうだが、特に何もない平坦な時間と言うのは大切だが、その時間がずっと続けると言うのは流石に飽きる。どんなこともバランスが大事なのだ。


それらを踏まえた上でこの配信を見てみよう。


特に魔物も出ることなく、異界の中を歩きながら、モデルと俳優の二人が雑談をし、時折俺が混ざる配信…。


あれ……?まずくない?


――――――――――――――――――――

・トップチャット


・剣王が居るから安心して見れるな

・ 安心して茶が飲める

・勝ったな風呂入って来る

・フラグが機能しない配信は此処ですか?

・ちょっとお茶菓子買ってくる

・俺は紅茶淹れて来る

・昼からの飲酒たまんないぜ!  5000円

・俺は……何淹れようかな

・昼から飲酒ニキは覚悟決まり過ぎやろ



――――――――――――――――――――


ま、拙い…コメント欄でお茶会が開催されてる…。


このままじゃ…異界探索配信ではなく、お昼のお茶会配信になってしまう。


「お二人とも、少し良いですか?」


前を行く二人に声をかける。

二人はこっちを見て不思議そうに首を傾げる。


「何かありました?」


「その、このままだと代り映えのしない配信になってしまいそうなので、少し工夫をしようと思いまして…。」


「ええっと……と言うと?」


月宮さんにそう言われ、俺はさっき思いついた事を言う。


「つまり、魔物を配信に映してから対処法などを話して倒そうと思います。そっちの方が皆さんも助かるかな…と思ったので…。」


「え…そ、それって?!」


――――――――――――――――――――

・トップチャット


・S級冒険者の攻略解説動画ってこと…?!

・マジで!

・教えて欲しい!

・オーガの倒し方お願いします! 2000円

・ナイトリザードマンで!  1200円

・マジか…神じゃん

・ハイオーク! 1600円

・レッドミノタウロスが良いです! 3000円

・異界の王のサイクロプスお願いします…。 10000円

・メタルゴーレムでもいいですか? 6000円

 

―――――――――――――――――――――


「うえっ!お金なんていいですよ!……と、兎に角、皆さんのリクエストの魔物を中心に解説していきますね。」


そう言いつつ、俺はアイテムボックスに剣を仕舞い、二振りの短剣を取り出す。


「それじゃあ、まずは近くに居るオーガから行きましょうか。」


「おぉ、遂にS級冒険者をこの目で見ることが出来るんですね!」


キラキラした目でそう言って来る甲斐さん。

やっぱり彼の視線は眩しすぎる。


「それじゃあ…行きます。」


通路の先から現れる巨体。

肌は紅く、筋肉質であり、日本の伝承で出て来る鬼の様な見た目をした魔物。


実はこの魔物オーガと言う名前をしているが、”鬼”とさほど見た目もそのステータスも変わらない。

唯一の違いと言えば魔法を使うか使わないか程度だ。

その為、鬼に慣れればオーガも倒せると多くの冒険者に言われている。


閑話休題。


俺は改めて短剣を構え直す。


胸元に着いているマイクに聞こえるよう出来るだけはっきりとした声でオーガの倒し方を話していく。


「オーガは、その他のB級よりも比較的高いステータスを除けば割と簡単な相手ですが、如何せんそのステータスの高さに苦戦する冒険者も多いでしょう。」


俺はオーガの攻撃をすれすれで躱しつつ、背後に回る。


「しかし、このようにギリギリを狙って攻撃を躱せば背後に回り込むことが出来ます。本来であれば、ここで首を斬るのが一番ですが、今回はそうしません。」


「さて、ここからはスピード勝負です。」


オーガがこちらに気付き、振り向こうとしてくるが、その寸前で奴の腱を斬る。


「いかに魔物と言えど、やはり人型の魔物は人に近い身体構造をしています。故に……」


こちらに倒れ込んでくるオーガ、奴の首と頭に合わせて勢いよく剣を突き立てる。


「首と頭、両方を突き刺せてしまえば終わりです。どちらかだけだと魔物は生命力が高い為、生き残る可能性がありますので、しっかりどちらも突き刺しましょう。」


軽く息を吐いて整える。

良し、割と良い感じで倒せたな。さて、コメント欄はどんな感じかな…?


――――――――――――――――――――

・トップチャット


・うっま

・手際よすぎじゃね?

・うっま

・そんな簡単に倒せるもんなの?

・すげー…

・ちゃんと実現不可能な動きじゃないのが凄い

・解説分かり易くて草

・丁寧な解説ありがとうございました!  1000円


―――――――――――――――――――――


「いえいえ、皆さんが参考になったのなら幸いです。」


二人の方を向くとポカンとした顔をしていたが、直ぐに元の表情に戻っていた。


「す、凄かったです!マジで、カッコよかったです!」


甲斐さんがそう言って、先程より三割増しの眩しい瞳をこちらに向けて来る。

本当に目がつぶれてしまいそうだ…。


「本当に素晴らしい手際でした。思わず見ていて惚れ惚れしてしまいました。」


月宮さんにもそう言ってもらえてとてもありがたいな。

正直、手加減はあんまり得意ではないから皆のお手本になることが出来るか不安だったんだ。


二人にそう言ってもらえて、内心かなりホッとした。


「それじゃあ、次のリクエストに行きましょうか、えーっと…ナイトリザードマンは申し訳ないのですがこの異界には居ないので、ハイオークにしましょうか。」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


326名無しの冒険者

異界探索とんとん拍子で進んでくな。


327名無しの冒険者

>>326

剣王が全部斬ってますしねぇ…。


328名無しの冒険者

>>327

やっぱバケモン。


329名無しの冒険者

>>328

前から分かってた事やん。


330名無しの冒険者

お?剣王がなんか言ってるわ


331名無しの冒険者

剣王先生の特別授業ってマ



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497名無しの冒険者

分かりやすいけど…こんな動き実際できるん?


510名無しの冒険者

>497

恐らくC級冒険者でそこそこな武器が揃ってれば行けると思う。

けど、オーガの攻撃をギリギリで避けるなんて相当胆力が無いと無理だぞ。


512名無しの冒険者

>>510

へー意外と出来るもんなんやなサンクス


523名無しの冒険者

次はハイオークだってよ


532名無しの冒険者

>>523

倒し方自体はオーガと変わら無さそう…?


573名無しの冒険者

本来こんなに鮮やかに倒すもんじゃないって…


579名無しの冒険者

遠くから魔法でチマチマ削るクソゲーだって…


583名無しの冒険者

>>573 >>579

お、もしかして現役冒険者ニキ?


584名無しの冒険者

>>583

せやでB級の魔法使いで生計を立ててるで


585名無しの冒険者

>>583

ワイはB級の戦士やな


586名無しの冒険者

>>584 >>583

ちょ、分かりにくいからコテハンつけてくれん?


587名無しのB級魔法使い

>>586

これでええか?


588名無しのB級戦士

>>586

上手く行ってるっぽいな


589名無しの冒険者

>>587 >>588

サンクス


590名無しの冒険者

てか、現役冒険者ニキ達でも苦戦するんやな…


591名無しのB級魔法使い

>>590

当たり前よ、ハイオークとオーガなんて身体能力だけで見たらほぼA級の魔物だぞ


592名無しのB級戦士

>>590

あそこまで簡単に倒しているのを見ると流石S級冒険者だなって感じるよ


593名無しの冒険者

はえー、何やかんやでS級冒険者これで二人目やから、よく分からんのだけど、二人から見てもS級って異常なん?


594名無しのB級魔法使い

>>593

出会って1秒も経たずに死ぬ自信がある


595名無しのB級戦士

>>593

戦って肉片が残ったらいいななんて思うくらい強い。


596名無しの冒険者

>>594 >>595

S級こわ


597名無しの冒険者

>>596

申し訳ないけど同意するわ


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・用語紹介


・〈身体強化〉


大半の冒険者が使用するスキル。

ものすごく汎用性が高く、どんなポジションの人でも使用している。

慣れてくると体の部位ごとに強化する割合を変えたりすることも出来る。


・冒険者ランキング


国内の冒険者たち(A級以上のみ)のランキング。

これは単純な戦闘能力でランキングされている訳ではなく、市民からの人気、武器や回復薬などの生産する戦闘外の貢献等々、総合的に判断している。


・冒険者のランキング


・S級

1位 【統率者】

2位 【九尾の狐】

3位 【剣王】 天城 湊

4位 【最上級鍛冶師】

5位 【色彩の魔術師】

6位 【守護天使】

7位 【拳聖】

8位 【聖女】

9位 【鷹ノ目】


・A級

10位 【獄門犬】

11位 【最上級錬金術師】

12位 【武術師範】

13位 【見習い鍛冶師】(自称)

14位 【白光】

15位 【大剣豪】


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128位 【刀華】 

129位 【雷狼】

130位 【熱拳】



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