第4話
「あー……疲れた。」
自分の机に突っ伏しながら俺はそう呟いた。
「お前も朝から災難だったな、まさか異界の出現に巻き込まれるなんてな。」
そう言って俺の友達の”
「笑い事じゃないんだって…本当にさ、いろんな人が迷惑するんだから、異界も空気読んでくんないかな…。」
「そんなこと言っても無理だろ、諦めろって。」
そう言うと、陽太はスマホを見ながら前髪を触っていた。
「……身だしなみに気を使ってるけど、今日なんかあるのか?」
「えっ!それ聞いちゃう?聞いちゃうか~…」
目に見えて嬉しそうな表情を浮かべる陽太、こんだけ勿体ぶるって事は相当良い事なんだろうな。
「実はさ~…今日…なんと!今日は友達が合コン組んでくれてさ~…あ!良かったら湊も来るか?相手の子も凄く良い感じでさ……。」
そう言って陽太はスマホを見せてくる。
見せてもらった写真には笑顔でポーズを決める女子が写っていた。
「ははは……俺は良いかな、また機会があったら…かな。」
そう言うと陽太は残念そうな表情を浮かべた。
「そうか…ま、湊は結構忙しそうだしな。そう言えばさ――」
そう言って他愛のない話を続ける陽太。
俺は彼に適当に相槌を打ちながら、今朝の事を考える。
今朝の異界は間に合って本当に良かった…。
それにしても…最近、顕現型異界の数が増えている気がする。
これはもしや何かの兆候なのか…それとも…。
そんな事を考えていると突然放送がかかった。
『一年二組の天城…一年二組の天城…校長室まで来てください。』
「……湊、これで呼び出し今月入ってから三回目だよな、大丈夫なのか?」
そう言って陽太は不安そうな表情を浮かべる。
「大丈夫だって、別のそんな難しい話じゃないし。ただ、あんま遅刻するなよって言われるだけだよ。」
それでも不安そうにこちらを見る陽太に笑顔で手を振って校長室へと向かう。
どうせ色々言われるんだろうな…と思いながら重い足取りで廊下を歩く。
陰鬱な気持ちで校長室へ向かっていると目の前から見覚えのある顔が。
「へー…そうなんだね、私もそう思う……。」
友人と談笑中だったようだが、あちらもこっちに気付いたようで若干気まずい空気が流れる。
僕は気まずさから思わず目を伏せてしまう。
談笑していた友人らしき人物が違和感に気が付いたのか彼女に声をかけている。
「どうしたの?
彼女…”
「…あ、ううん、何でもないよ。それで、どうしたの?」
「…え、本当に大丈夫?もしかして、冒険者業務でお疲れだった?」
「本当に…大丈夫だから…。」
そんな事を話しながら二人は離れていく。
―――秋月、元気そうだったな。
俺はそう思って、少しだけ昔に思いを馳せる。
幼稚園の頃から縁のある彼女だが、あれ以降は話すことも無かった為、少しだけ懐かしく感じる。
―――幼いころはよく遊んでたっけ…。
と幼いころの記憶に浸っていると、校長室に着いたようだ。
ノックをして返事が来たので特に遠慮すること無く入室する。
「はは、【剣王様】…本日も来ていただいて申し訳ありません。」
気持ちの悪い媚び諂った笑みを浮かべながらごまをすって来る50代の小太りの男。
「別に…良いですよ…。」
僕はぶっきら棒にそう答えた。
こいつの目的は決まってる。
瞳の奥で輝く欲望が隠しきれていない。
「その…本日も授業を休まれたとか、こちらも手を回しますが…そろそろ限界が来そうで、そこでですね…我が校へもう少し寄付金の方を…。」
ほら来た。
「分かってます、もう少し金額を増やすので…お願いします。」
そう言うと
「ありがとうございます!後はこちらにお任せください。」
「要件はこれだけですか?」
僕はいち早くこの場から離れたいという気持ちを隠す事なく、出来るだけ低い声でそう言った。
「――――っひ!…え、ええ、申し訳ありません。」
威圧感を出しすぎたせいか校長が怯えているが気にする事無く、校長室から退室する。
……ああ、政府さん、もう少し冒険者に優しい法律を作っていただけないですかね…?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
キャラクター紹介
・夏原 陽太
湊の親友にして本作において二人目の聖人。
ちょっと女好きなのが玉に瑕だが本当に良い奴。
実は湊の冒険者活動について何となく知っているが、剣王だと言う事はまだ気付いていない。
・秋月 澪
主人公の幼馴染、容姿端麗で冒険者もやっている為、人気が高い。
高校生でA級パーティーを組んでいて、かなりの実力の持ち主。
とある出来事を境に主人公とは疎遠になっているようだが…?
・校長
屑。我欲の塊。
主人公は元々学校に行くつもりが無かったが、冒険者たちに優しい学校を探してこの学校に入った。
最初の1か月間は良かったが、主人公がS級冒険者だと知ってから豹変した。
主人公が学校を休みがちなのを理由に退学させる可能性を示唆し、主人公から金を搾取する屑。
勿論そのお金は校長の懐に納まっている。
因みに主人公は叔母を悲しませまいとこの事実を話していないし、この状況が普通だと思って仕方ないと受け入れてしまっている。
・用語紹介
・私立陵科高等学校
主人公が通う高校。
教師陣は真面目な人が多く、生徒に寄り添うとても良い教育をしている。
また、冒険者活動に前向きな考えを示しており、補習授業や授業内容の質問など、忙しい生徒でも単位が取れるように工夫している。
しかし、校長を含む何名かの教師が腐っており、湊に対してのみ嘘をついて金を要求している。
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