第2話
「ただいまー」
都内にあるマンションの一室、誰もいないこの家に向けて俺はそう言った。
取り敢えず俺の部屋に行って服を脱ぐ。
箪笥からエプロンを取り出し、紐を結びながらリビングへと向かう。
リビングはこの家の家主が慌てていたことを如実に表すようにそこら中に服や化粧品が散乱していた。
取り敢えず、冬場の寒さで冷え切った部屋を温めるために暖房を点ける。
この家の主は叔母さんだが…流石に俺にも配慮してくれると嬉しいんだけど…。
「全く、叔母さんは何やってるの…朝あれだけ忠告したのに…。」
そうブツブツと呟きながらも服は叔母さんの部屋の箪笥に畳んでしまい、化粧品は化粧箱へと戻す。
時刻は既に21時を回っており、今から夕飯の支度をするにはあまりにも遅い。
風呂は水魔法で洗い流すとして、今日のご飯はどうしよう…無難に米と味噌汁、後は焼き鮭で良いかな。
一通り片づけが終わったら急いで料理に取り掛かる。
異界で備わった技術を無駄に使いながら最速で食事の準備をする。
先程スマホに《今、最寄りの駅に着いた》と連絡が入った。
適当にスタンプを送り、スマホを遠くに置く。
最寄りから家までは叔母さんの足だったら歩いて15分、そこまで余裕が無い為、少し急がないと。
「たっだいまー!」
予想通りの時間帯に叔母さんは帰って来た。
だがしかし、既に食事の準備は終わっている。
時計が指し示す時刻は21時30分、風呂も沸いており出迎える準備は完璧だ。
玄関へと叔母さんを迎えに行くと…。
「えへへーたらいまー。」
凄く酒臭い女性が座り込んでいた。
服は特に大きく乱れている様子は無く、ただただ凄く酒の飲み過ぎで酔っているだけだった。
「こらー!湊ー!返事くらいしらさい!」
叔母さんは玄関に座り込んだまま俺に説教をしてくる。
「あ、うん、お帰り…叔母さん。」
叔母さんは笑顔になったかと思うと突然泣き始める。
「うわー!湊が叔母さんって言ってくるー!なんれ、なんれ彩希おねえちゃんって呼んでくれないのー!」
たまにこんな風になる叔母さんだが、今日は何時にも増して酷い。
仕方ない、悪酔いした叔母さんを抱き上げ、布団まで連れて行く。
ベッドの上に寝っ転がらせたら、パジャマを渡す。
「ほら、おば……彩希姉ちゃん。これに着替えて。」
ぼんやりとした表情を浮かべる彩希姉ちゃんは少しづつ着替え始めるのを確認してから。
「それじゃあ、ちゃんと寝るんだよ。おやすみ。」
扉を閉めてリビングに戻る。
出来立ての夕食は未だに手が付けられずに湯気を立てている。
まぁ…良いか、一人で食べよう。
「いただきます。」
まずは味噌汁から…
「――ズズッ……はぁ。」
冬場の冷え切った体に染み渡る。
次に焼き鮭を口に入れる。
…自分で言うのもなんだが塩加減も丁度良くて、ご飯が進む。
何だか…幸せだなぁ…。
この穏やかな日々が続くと良いな、と本当に思う。
あっという間に僕の分は食べ終わった。
明日に回すために作っておいた叔母さんの分はサランラップで包んで置こう。
…明日も学校だ。
遅くに寝ると明日に支障が出るし、早めに風呂入っちゃおう。
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風呂上がりにスマホで今日の昼に言われた【冒険者協会公式チャンネル】が出している動画を見てみる。
動画の内容はモデル兼A級冒険者の”
それにしても…話すの上手いな~。
戦闘技術はもちろんの事、そのコミュニケーション能力たるや圧巻だ…。
画面の向こうの顔の見えない誰かとあんな風に喋れるものなのか?
俺には無理だ…。
てか、本当に俺なんかが、こんな凄い事やっていいのか?
いや、戦闘能力だけ見ればワンちゃんあるかな…?
それも駄目だ、俺の戦い方華が無いし…。
結局の所、この日は結論が出ず、諦めて寝ることにした。
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・キャラクター紹介
天城 彩希
主人公、湊の叔母に当たる人物。
性格、見た目共に基本的にとてもクールな女性だが、お酒が入ると急にダメダメになる残念な美人。
湊が幼い頃から仲が良く、よく遊んでくれる良い人だった。
5年前、親族会議で湊の能力にばかり目を向けていた親族の中で、死んだ目をしていた湊を見て、自分がこの子を守ると決意した。
そこからは自分の時間の殆どを仕事と湊のメンタルケアに費やし、湊が普通に話せるレベルに回復させた。
マジでガチの聖人。
湊も彼女の事は心から信頼しているし、彼女も湊の事を大切に思っている。
・用語紹介
・冒険者
遥か昔から存在していた職業で時代と共にその名を変えて来た。
F~Sの7段階の等級に分けられており、殆どの人がF級からスタートし、上手くいけばC級、才能が有ればB級、ほんの一握りの天賦の才を持った者がA級、完全な人外がS級に成ることが出来る。
冒険者になる者達の暗黙の了解が、「S級は目指す物では無い」
それ程までS級と言うのは人智を超えた力を有している。
日本にはS級に分類される冒険者は9人おり、とても特徴的な人物である。
・ステータス
全ての人間はステータスと言う物を持っており、レベルが上がることで更新され、その際に変化するステータスの伸びは人によって違う。
身体能力が数値化されているのに加え、”スキル”と呼ばれる物も記載されている。
・スキル
本人の技術や技をレベルで表したもの。
例えば、剣道の県大会で優勝する程の実力を持っている場合、剣術…lv6、のような感じで、ステータスのレベルに関係なくスキルやスキルのレベルは上がる。
他にも、魔法なんかはスキルが無くても慣れれば使うことが出来る。
しかしながら、やはり魔物を倒すことでステータスのレベルを上げる方が効率が良いので、スキルのレベルを上げたいのならば、異界に行ってレベルを上げよう。
因みに、これら以外にもスキルは手に入れることが出来、スキルの書と呼ばれる物を読めば、それに対応したスキルを得ることが出来る。
最後に、スキルは進化することが有り、lv10まで上げると、何かの拍子にスキルが進化する。
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