地獄




テルと彼の仲間たちは手分けして世界に住まう人々に呪いをかけた。

それは他者を呪わずにはいられない呪い。

すなわち、自分を嫌っているのが誰かが目に視える能力を人々に付与したのである。


「・・・・ははっ」


始めは皆戸惑っていた。他者からの自分に向けられた敵意が明確に視える事に恐れおののいていた。

そして彼らは次第に気付く。この能力が発現したのは自分だけではないのではないか――――と。

そうすると相手にも同じように視えている事になる。自分が相手を嫌っている事を。


「存分に楽しめよ、この世の地獄をさあ!!」


そうなったらもうダメだった。

人は、自分をいい人だと思いたい生き物だ。だから人は己を正当化するし、言い訳もする。

それがどうだ。今や自分の敵意も悪意もまるっきり相手に筒抜けである。

相手にとって自分は“いい人”ではない。

その事実に耐えられる人間など――――その事実を以てしてなお、幸福でいられる人間など――――いるはずがないのだ。


「俺たちはおまえたちを絶対に許さない。その報いを受けろ」




世界のどこかで、地獄の始まりの音が鳴った。

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