テルの結論
「〇〇さんに交際を迫られている?・・・はあ、そう。何度断ってもその仲介役の人が諦めない、と・・・。ストレスで体調を崩す?貴女それいつもじゃない。――――分かりました」
「じゃあ・・・」
「貴女の言っている事が本当の事か確かめる為に、この話を〇〇さんに聞いてもいいですか?」
「は!?――――やめてください!!」
職場での悩みを桃花は上司に相談したが、返って来た言葉は有り得ない内容だった。
信じられなかった。「〇〇さんに交際を迫られていると白石さんが相談に来ましたよ」等と当の〇〇に話したりしたら、〇〇は次にどのような行動に出るか分からない。その危険性をこの上司は分かっていないのだろうか。それが分からなくてなぜそのポジションにいるのか。分からない分からない分からない。何もかも。怖い。人間が怖い。不安でたまらない。胸が苦しい。くるしい。くるしい。くるしい。ああ――――
わたしは。
ストレスの重圧に耐えきれず、体調を崩した桃花はその日仕事を早退して帰宅した。
ドアに鍵をかけ、最後の力を振り絞って石けんで手を洗い、パジャマに着替えて、ベッドに倒れ込む。
「・・・・・・・・・・・・・・・・死にたい」
ぼそっと呟いた。
「もういやだ。生きててもしんどい。つらい。つらい。もういやだ・・・・」
「分かった」
一人きりで呟いていたつもりが思いがけず返事が返って来て桃花はがばっと跳ね起きた。
そうだった――――今のわたしには同居人が、
「桃花。もう疲れたろ。眠っていいぜ」
ベッドの上の彼女の顔は真っ青を通り越して白くて、出会った時よりも痩せているように見えた。
その様は、幸福とは程遠い。
ベッドのそばに立つテル。
彼女を真っ直ぐに見すえて、彼らの結論を告げる。
「決めた。この世界はやっぱりクソだ。――――だから俺たちが責任を持って滅ぼそう」
彼の何の感情もこもっていない声を聴いて、桃花は大きく見開いたままの目からひとすじ、涙をこぼした。
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