第3話 企て ――祐樹


 昭彦の嫁さん、いい女だったなあ。

 オレはキャンプのときに撮った写真をスマホで見ていた。いくつもスワイプして、昭彦の妻の写真だけじっくり見る。


「ねえ、あたし、ちょっと買い物行ってくる」

「おう」

 スマホから目を離さず応えると、香織はうきうきと出かけて行った。


 浮気だな、と確信する。

 しかも、相手は昭彦だ。二人とも、バレてないと思っているのが痛い。

 オレはパソコンを立ち上げ、香織の居場所を確認する。GPSでどこにいるのかすぐに分かって、本当に便利な世の中になった。

 香織が昭彦の元カノだというのは、実のところ、知っていた。知っていて、香織と結婚したのだ。香織は想像以上にバカだったが、逆に頭が回らない分、いろいろと便利ではあった。


 香織と昭彦が想定通りの場所へ行くことが分かり、先回りすべくオレはバイクで自宅を出た。証拠は出来るだけ確実に揃えておきたい。

 二人がラブホテルに入るところをうまく写真に収める。……よし、顔もばっちり分かる。


 ……それにしても、キャンプのとき、香織が昭彦の嫁さんの包丁を火にくべたのはひどかったな。昭彦も昭彦で、嫁さんに寄り添うこともせず、ひどい態度だった。

 この写真を見せたら、彼女はどういう反応をするだろう。

 笑いを嚙み殺す。


 昭彦。

 お前、もう終わりだよ。

 今度こそ、ようやく終わり。

 お前は何もかも、失くすんだ。妻も仕事もお金も。

 じわじわと追いつめてやる。

 ああ、香織はそばにいるかもしれないな。

 お前ら、お似合いだ。二人でどこまでも落ちていけ。

 自宅に帰り、パソコンを再び立ち上げ、今度は昭彦の家の様子を見る。

 カメラが、昭彦の妻が手当たり次第にものをゴミ袋に入れている姿を映し出していた。

 喜びで手を震わせながら、その様子を眺める。

 もういいタイミングかも。いま押したら、必ず離婚する。

 俺はスマホに手を伸ばし、昭彦の家の電話の番号をタップした。

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