黄色いチューリップ
kanaria
第1話
『今日夜来れる?』
21時。私が退勤したタイミングでLINEの通知が来た。いつものことなのでさして何とも思わない。
『いいよ。今から行く』
我儘に付き合ってしまう私も悪いのだけど。
どうしても断り切れない自分がいて嫌になる。
近場の喫煙所に仕事終わりのサラリーマン達に混ざって一服する。
銘柄はWinstonキャスターホワイトの5mg
これは彼と同じ煙草でとても甘い香りがする。元彼が吸っていた煙草は臭くて嫌だった。けど今は何とも思ってない。私も同じだから。
彼の家に向かう途中、コンビニでお酒を買ってつまみになる物を適当に見繕う。
ほろよいの限定フレーバーと金麦を二つずつと柿の種。彼の家にもストックはあるだろうからこのくらいで。
あと少しで着くのに近くの交差点で赤信号に引っかかってしまった。
二十秒程度の停止がひどく長いように感じられた。
マンションのホールに入ってインターホンを鳴らすとオートロックが開き自動ドアが先を促してくれる。
エレベーターに乗り込み六階のボタンを押した。
降りて廊下を進んだ先、角部屋が彼の住む部屋だ。
ドアの鍵はすでに開いていて、開くと目の前には彼が両手を広げておかえりと微笑んだ。
この言葉を聞くだけでその笑顔を見るだけで疲れや悩みも吹き飛んでしまう。
私を笑顔にさせてしまう魔法使い。
私は笑顔でただいまと言った。
黄色いチューリップ kanaria @kanaria_390
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