第六十一話・第六話「三角関係」
朝陽が賀茂家の門から出ると外には、篁が待っていた。
「よっ、朝陽。迎えに来たぜ!」
「えっ、今日は篁様なの? うれしー!」
憧れの人の迎えに朝陽の顔が可愛いらしい満面の笑みになる。
「おっ? 可愛い事を言ってくれるな」
篁もにっこりと微笑む。
「ねえ、今日は道満ちゃん。どうしたの?」
「今日はあいつ急遽、仕事が入ったらしいぜ」
「へー、そうなんだ」
ちょっと寂しかったが、仕事なら仕方ないと朝陽は思い直した。
☆
朝陽と篁は、賀茂家の授業の帰り疾風に会った。
疾風は、偶然をよそおっているようだったが、明らかに朝陽を待っていたように
篁は感じた。
篁は疾風に声をかけた。
「オレの事は、知っているよな? オレは小野篁。津島疾風、お前に話しがある。」
「ああ、わかった……」
「篁様、疾風に何の用があるの? 早く帰ろうよ」
朝陽が不安そうな表情で篁の着物のすそを引っ張った。
「少し待っていてくれないか? おまえにも、関係があることなんだ」
「うん……わかった」
朝陽は、自分も関係がある事に嫌な予感がしていた。
「おい、小僧。お前朝陽の事。好きだろ?」
「ぶはっ! なっ!? いきなりなに言ってんだ、お前!」
疾風は、突然の篁の言葉に顔を真っ赤にしてちょうど飲んでいた水を吹き出した。
「諦めな。朝陽はオレの女だ」
「なに!? ふざけんな。そんな事を誰が決めたんだよ」
「朝陽は人であって人ではない。お前には朝陽は幸せに出来ない」
「それじゃ、あんたには幸せに出来るっていうのか!」
「そうだ。少なくともオレには出来る」
「やめてよ、篁様! 疾風。なにをやってるのよ!」
「えっ? これ、この前の夢の……嘘でしょ」
朝陽は夢の事を思い出してはっと気づいた。
「疾風、あんた。どうしたのよ! あんたは、私なんて興味ないはずでしょ」
「うるせえ、黙ってろ! 男同士の話だ」
「なんですって!?」
朝陽はその物言いにカッとなった。
「そうだよ! お前の言う通り、俺は朝陽が好きだ! ガキの頃からずっと、好きだったんだよ!」
疾風はやぶれかぶれで告白した。
「うそ、疾風……」
「ハッ、本音が出たな。こわっぱ! だが、朝陽はお前には渡さない! オレ達は、前世から結ばれているんだからな」
篁は鋭い視線を疾風に向けた。
「前世ってなんなんだよ! いい加減なことを言うな!」
疾風が負けじと篁に食って掛かりそうになる。
「ちょっと、二人とも! 勝手に言い争わないでよ。私の運命の人は、私が決めるわ!」
「帰りましょ。篁様」
朝陽が篁の手を引く。
「待てよ朝陽! まだ、話が」
「疾風、あんたの気もちは嬉しいけど。私の気もちはもう、決まっているの。ごめんね?」
そう言うと朝陽は篁と一緒に屋敷の方へ足早に歩いて行ってしまった、
「ちくしょう……あの
疾風は悔しそうに舌打ちして、朝陽と篁の後姿を目に映した。
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