真実の歴史と改竄された歴史
【真実の歴史】
これは、今よりずぅ～っと、むかしむかしのおはなしです。
この世界には昔から「魔の者」という生き物が、暮らしていました。
魔の者は、人型・獣型・植物型と、個性豊かな姿をしています。
魔の者はみんなそれぞれ、「不思議な力」を持っていました。
互いの個性を認め合い、みんな仲良く暮らしていました。
ある日、「ヒト」と呼ばれる生き物が、別の世界からやって来ました。
ヒトは、自分達の世界が滅んでしまったので、
ヒトは人型しか姿がなく、魔の者とは全く違う生き物でした。
ヒトは、魔の者が持つ不思議な力は持っていませんでした。
代わりに「科学の力」で、進化してきた生き物です。
魔の者は、ヒトが
魔の者は、不思議な力でヒトを助けました。
お礼に、ヒトは科学の力の技術を魔の者に教えました。
こうして、魔の者とヒトは、みんな仲良く暮らし始めました。
ところがヒトは、この世界の環境に
この世界は、ヒトが生きていくには、気温と気圧と酸素濃度が低すぎたのです。
少しずつ、顔や手足のむくみ、頭痛、
やがて、多くのヒトは、
どうにか
ヒトは、自分達の遺伝子を残す為に、研究に研究を重ねました。
魔の者も、協力を惜しみませんでした。
そしてついに、「この世界に適応するヒト」を、完成させました。
ヒトの遺伝子に、魔の者の遺伝子を組み込んで誕生した、新たなる生き物。
ヒトと魔の者の「間」に生まれたので、「人間」と命名しました。
「これで共存出来る」と、ヒトと魔の者はとても喜びました。
しかし、これが悲劇の始まりでした。
魔の者の遺伝子を組み込まれた人間は、「奇跡の力」を得ました。
奇跡の力は本来、魔の者が持っていた能力です。
魔の者は生まれつき、さまざまな力を使うことが出来ました。
ですが人間は、ひとつしか使えませんでした。
それは、何故でしょうか。
ヒトの遺伝子は、魔の者の力に、耐えられなかったからです。
その上、全ての能力がヒトよりも
悪い言い方をすれば、人間は失敗作でした。
人間は、失敗作の自分を作ったヒトと魔の者を、責め立てました。
そして、まもなく、ヒトは滅びました。
ヒトが滅びると、人間は新たに「独自の歴史」を作り始めました。
「『ヒト』などという生き物は、初めから存在しなかった」
「この世界は、最初から『人間』のものだった」
「『魔の者』は、この世界を侵略する『邪悪なる異形の存在』」
「『奇跡の力』をひとつしか持っていないのは、魔の者に奪われたからだ」
このように「人間にとって都合の良い歴史」に、書き換えてしまいました。
人間は、「真実の歴史を知る魔の者」を敵視しました。
魔の者はヒトの移住を認め、力まで貸してくれたというのに。
その恩も忘れて「人間だけの世界」を、勝手に築き上げてしまいました。
居場所を奪われた魔の者は、森へ追いやられてしまいました。
これにより、人間と魔の者に対立が生まれました。
現在、「真実の歴史」を知っている魔の者は、ごくわずかしかいません。
知恵ある魔の者の一族だけが、「真実の歴史」を語り継いでいるのみです。
人間は、自分達にとって都合の悪い真実の歴史は、「なかったこと」にしました。
【消えた無能力の子】
ある日、ひとりの男の子が姿を消しました。
「森の邪悪な魔女に、連れ去られた」と、教会の責任者は騒ぎ立てました。
人間達は、その男の子が「無能力の子」だと知っていました。
ですから、誰も男の子を探そうとはしませんでした。
「邪魔な子がいなくなって、清々した」と、人間達は喜びました。
「あの子の奇跡の能力も、魔女に奪われたに違いない」と、男の子の両親は言いました。
それっきり、男の子が戻って来ることはありませんでした。
「きっと、魔女に食べられたんだ」と、人間達は噂しました。
そして、「無能力の子なんて、存在しなかった」ことにしてしまいました。
※ナレーションは、本編では、ほとんどカットしました。
正直、面白くないんで。
必要な部分だけ、細切れに切り抜いて使用しています。
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