第3話

三打目

◉幻覚


 その日以来、北山銀次は旧友の萬屋勝よろずやまさるの店を手伝うようにした。と言っても言われた時に来店して間を埋めるだけだが。給料は必要無かった。ゲーム代だけタダにしてもらえればあとは自力で勝てるからだ。

 そうしているうちに人の上に文字が浮かび出る現象がまた現れる。

(なんだ、あれ?)

 気にしないようにしていた。自分が合法ドラッグをやっていた事による後遺症げんかくのような気がしていたから、そんなものは見えていない。そう言い聞かせていたのかもしれない。しかし、やっぱり見える。


 その日、夢を見た。


…なぜ、見ようとしないんですか。あれはあなたの能力ですよ。見ればいいんですよ、使って下さい。私が与えた力…



ピピピピピピピピピピ


(うるせえ!)ガン!


(あー、今日は10時に来店してくれって言われてたっけなー。よし、起きっかー)


 夢のことはまた覚えていない。


 能力を持つ男、北山銀次。彼は自分のその授かった力を使うことを知らずに今日も真剣勝負をしに行くのだった。夢で見たことも覚えていないのだから仕方ない。


 この、能力を持ちつつ使わない日々は半年ほど続いたのだった。

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